ピーター・アーツを倒した男の心を震わせたRIZIN.26、「人生勝ち負けだけじゃない」
2020年の大晦日に行われた「RIZIN.26」。堀口恭司の復活リベンジマッチなど、一年を締めくくるのにふさわしい好試合が連発した同大会について、大晦日のリングでピーター・アーツに勝利を収めた経験を持つ元総合格闘家の大山峻護さんに感想を聞いた。
大山峻護さん
○五味隆典vs皇治●
42歳の五味選手は元PRIDE王者で、総合格闘技界のレジェンド。全盛期のパンチは世界トップレベルの威力ですし、10キロ以上の体重差があるので、那須川天心選手とやりあった皇治選手でさえぶっ飛ばされるんじゃないかと思っていました。
そんな体格差のある危険なマッチに真っ向勝負を挑む皇治選手の男気は素晴らしい。ファーストコンタクトで五味選手のパンチもらった時、想像以上の威力だったと思いますが、そこから火がついて、最後まで撃ち合う姿を見せてくれた皇治選手はすごいと思います。
五味選手も体を見ると直前のオファーだと思います。時間のない中で減量して、しかも自身にはブランクがあり、相手はバリバリ現役のファイター。まだコンディションが作れていないままリングに上がって、バチバチに殴り合ったということはすごい。最後、コンディションを作れていないからスタミナが切れて息が上がってしまっていたけど、それでも最後まで引かずに戦い切りました。カリスマファイター同士の根性の殴り合いに感動しました。
○浜崎朱加vs山本美憂●
山本美憂選手は僕と同じ46歳。僕は40歳で引退したので、46歳でタイトルマッチに挑むということがどれだけすごいことか。レスリングの世界チャンピオンから期待されてMMAの世界に来たものの、最初は負け続けたし、悲しい別れもあった。そこから這い上がって辿り着いた46歳でのタイトルマッチ。胸が熱くなりましたね。そんな山本選手を上回るパフォーマンスで封じ込めた、浜崎選手の世界トップクラスの実力を見られたのも良かったです。
もちろんアスリートなので勝敗は大事ですが、ここまで全てをかけて準備をして、今出せる最高の状態を作ってリングに上がってきた。その場で実力を出し切れなくても、その舞台にたどり着くまでにすごい財産を築いてきたんだろうなって感じました。人生って勝ちか負けかってなりがちですけど、それだけではないと教えてもらえたような気がします。