青木真也を突き動かす原動力「悪あがきしながらでも勝ちたい、生き延びていたい」、青木真也×大山峻護スペシャル対談2
日本でやるなら1・2回。調和せずにずっと対極に立っていたい
大山:あの当時のPRIDEは熱量がありましたよね。青木選手は今の格闘技をどう見ていますか?
青木:逆に、大山さんはどう見ていますか?
大山:僕は一ファンとしておもしろいなって思っていますよ。今までフィーチャーされなかったジョシカク(女子格闘技)が放送されるようになって、軽量級がアツく盛り上がって、僕的にはすごくおもしろい。でも、世間一般的にはどうなのかなって?って気になりますね。
青木:僕的には、競技になっていて全くおもしろいと思わないですね。運動の得意な人が集まってやっている感じ。だから、わざわざ見たいと思わないのが正直なところです。マスコミも含めて、文脈を伝え切れていないから、ストーリーラインが雑ですよね。僕がこういうこと言っちゃうこと自体が老害なんでしょうけど、小さくまとまっていて、僕が夢見た格闘技じゃないんですよ。今の格闘技見て、やりたいと夢みますか?
大山:僕としては、桜庭和志さんとか山本“KID”徳郁さん、魔裟斗さんとかが格闘技の最前線からいなくなって、その後には朝倉兄弟(未来・海)とか新たなスターがまた出てくるんだって思いましたね。ちゃんと循環していくんだって。ここで青木真也という劇薬を入れた時に何が生まれるのかって、それはみんな望んでいると思いますよ。
青木:それはよく言ってもらえますね。それで盛り上がるなら、って思いますけど、やるとしても1回、2回ですね。飽きる。中入ったら調和しちゃうんで、ずっと対極に立っていた方がいいのかなって思います。
無理しないから大怪我はしない。でも、見えないからこそ体のダメージが一番怖い
青木:大山さんの最近の活動としてはどんな感じですか?
大山:2014年に格闘技を引退して、今は企業研修とか社会貢献活動をしています。格闘技とは全然違うことをやっているけれど、それが僕のなかではすごく楽しいですね。
青木:大山さん、格闘技の最後の方は楽しそうじゃなかったですからね。
大山:あの頃は体がボロボロだったっていうのもありますけど、ずっともがいていて、他の選手に対して嫉妬していましたね。DREAMの時とか、青木選手に対してもそれはありましたよ。「青木真也はすごいな~。クソ~!」って。今は格闘技の時のマインド、「よしやってやろう」っていう気持ちを違う方向に全振りしていくのが楽しいですね。
青木:大山さんは今をすごく楽しんでいるのがわかりますよ。実はもっと早く引退できたのかもしれないですね。
大山:それはありますね。正直言うと、今体がボロボロなんですよ。首も膝も年中痛くて。長くやることがアスリートとして称賛されるところもありますけれど、長い目で見るとそうじゃないところもあるなって感じますね。
青木:それ聞きたいです!誰もそういう話をしないので。体のダメージってどうですか?
大山:こんなにダメージって来るんだ、って思っています。引退して筋量が落ちて、支えていたものがなくなったからかもしれないけれど、首の痛みは夜になると出てくるし、膝の痛みはずっとある。普通に歩くのも足を引きずるし、階段の上り下りもきついですよ。人工関節入れるかどうかというレベルで、生活に支障が出ています。現役中は自己暗示をかけているところもあったから、そこまで感じなかったですけれどね。
青木:大山さん、それもっと言った方がいいですよ!みんなアスリートのセカンドキャリアとか言うけれど、そんなのどうにでもなるから、体のことは絶対言った方がいいです。僕は今38歳だけど、この歳までやっていた人がいなくなってくるので、そういったアドバイスがないからわかんないんです。
大山:周りの人たちも長くやることはすごいって応援してくれるんですよ。それが嬉しいから頑張ろうとするんだけど、でもその人がその後ずっと支えてくれるわけじゃないですからね。
青木:大山さんたちの世代みんな体悪いところだらけって言うから、本当怖いですよ。ダメージ蓄積って見えないじゃないですか。それが一番怖い。「いつ死んでもいい」みたいなことを言っていた時もありましたけど、やっぱり格闘技を続けたいし、悪あがきしながらでも勝ちたいし、生き延びていたいですからね。
大山:でも青木選手は大きい故障とかはないですよね?
青木:僕はあまり無理しないので大きい怪我とかはないけど、何度かぶっ飛んでいるので。関節とか肉体のダメージとは別に、脳的なダメージも感じるんですか?
大山:最後の方は脳に倒れ癖もついていましたからね。後から来ますよ。普段話していて、今呂律が回っていないなって自分の中で感じることがありますからね。あと1、2試合やっていたら壊れていたんじゃないかなっていう感覚があります。
プロ選手から一格闘技ファンに戻れる幸せ
大山:体のダメージで言うと、青木選手はプロレスの試合で有刺鉄線とかやっていますよね。
青木:プロレスに対しては、格闘技の試合が終わったら、「じゃあプロレスできるなぁ~。また楽しいことできるな〜」ってテンションなんですよ。もう、なんか趣味ですね。
大山:青木選手の試合を見ていると、本当にプロレスのことを理解して、愛がないとできない試合をしているんですよ。ハードなものもできるし、コミカルなものもできる。2021年の大晦日も、ももいろクローバーZの「ももいろ歌合戦」に出てやっていましたけど、電流爆破とか有刺鉄線とかどんな心境なんですか?
青木:電流爆破って言えば大仁田厚さんですけど、僕は大仁田さん直撃世代なので、やっぱ嬉しいですよ。大山さんって何に影響されていました?
大山:僕はやっぱりアントニオ猪木さん、長州力さん、藤波辰爾さん、前田日明さん、高田延彦さんとか、全盛期でしたからね。
青木:大山さんも引退してから1回だけプロレスに挑戦していますよね?プロレスやった時どうでした?
大山:僕も小学校の時から本当にプロレスが大好きだったんですよ。UWFが出現して、こういうプロレスがあるんだって。そこからリングスとかUWFインターナショナル、パンクラスとか出てきて、PRIDEに流れていってだんだん格闘技が好きになっていきましたからね。元々がプロレスから入ったから、僕の中で夢が叶いました。初めてのプロレスは僕とKUDOさんで、高山善廣さんとディック東郷さんと対戦させてもらったので、本当に宝物ですね。
青木:高山さんとディック東郷さんだったら上手くなりますよね。もっとやればよかったじゃないですか!
大山:いやいや、体が…。本当に思ったのが、ダメージがすごく大きいんですよ。やってみて、改めてリスペクトしましたね。総合格闘技をバリバリやりながら、電流爆破している人って、たぶん世界で青木選手一人だと思いますよ。
青木:両方やりたかったんですよ。僕らが憧れていた藤田和之さんもケンドー・カシンさんも両方やっていたから、憧れなんです。だから、夢叶ったなって思っています。それ以上はないですよね。
大山:少年の頃に見ていた人たちの近くで今やっているわけですもんね。青木選手は根っこからプロレス少年ですよ。
青木:プロレスファンってすごく豊かで、ストーリーを楽しんだり、選手を応援しようって気持ちがありますよね。大山さんは一ファンに戻れているからすごいし、うらやましいです。
大山:プロレス少年だった頃と一緒で、想像するんですよ。僕は完全に今の仕事に全振りして、一格闘技ファンでいるので、今のRIZINに青木真也選手が来たらおもしろいだろうな~とか、考えるのが楽しいわけですよ。大好きな格闘技もプロレスも選手としてリングに立たせてもらえて、今はまたファンとしてリングの外からワクワクさせてもらったり、心を奮い立たせてもらったりしているので、人生がすごく楽しいですよ。
青木:それは本当すごいですね。みんな無意識にしがみついて、関係者から抜け出せない、戻れないですもん。業界を離れた人もいっぱいいますけど、どこか斜に構えたり、恨み節になっているんですよ。だからある種、大山さんは勝っていますよ。ファンとしてチケット買っていた時のワクワクした楽しい気持ちに戻れているって、すごくいい成功例だと思います。離れてスポーツに関わるいい形を見せてもらいました。
大山:青木選手にそう言ってもらえると嬉しいですね。青木選手ならではの考え方を聞けてよかったです!青木選手は永遠のプロレス少年で、その純粋な思いが今も生きていると改めて思いました。今日はありがとうございました!
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
大山峻護(おおやま・しゅんご)
5歳で柔道を始め、全日本学生体重別選手権準優勝、世界学生選手権出場、全日本実業団個人選手権優勝という実績を持つ。2001年、プロの総合格闘家としてデビュー。同年、PRIDEに、2004年にはK-1・HERO‘Sにも参戦。2012年ロードFC初代ミドル級王座獲得。現在は、企業や学校を訪問し、トレーニング指導や講演活動を行なっている。著書に「科学的に証明された心が強くなる ストレッチ」(アスコム)。ビジネスマンのメンタルタフネスを高めていくための本「ビジネスエリートがやっているファイトネス~体と心を一気に整える方法~」(あさ出版)を出版。
大山峻護さんInstagram
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