【後編】金メダルへのコーチング、体操ニッポンを支えたあるコーチの挑戦
前回に引き続き、2000年のシドニー五輪から5大会連続で体操日本男子代表コーチを務め、多くの金メダリストを育ててきた森泉貴博コーチのコーチング法をクローズアップする。そこには私たちが日頃の生活を送る上でも大事なヒントが隠されていた。
大舞台で結果を残すためのコーチング
4年に1度の五輪で結果を残すことは並大抵ではない。森泉コーチはどのような言葉がけで選手たちを金メダルに導いたのだろうか。
「練習中に100を出すのはいい。ただ試合のときは80でいい。これはこれまで選手や教えた子供たちに必ず言ってきた言葉です。なぜかといえば、なかなか本番で100パーセントの成功は難しい。80パーセントの力で試合を進め、残りの20パーセントは、失敗しそうになったときに失敗に見せないようにしなければいけないので、残りの2割は取っておきなさいということ」
大本番で力を出そうとすると誰もが100パーセントの力を出そうと力むもの。ただそうなるといざ本番で失敗したときに余力が残っておらず、リカバリーが不能になってしまう。ある程度の余裕を持って臨むことで、巻き返しが可能になるというのだ。さらに同コーチは国際大会において、大事なポイントについても言及した。
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