防衛戦&ダイレクトリマッチのWタイトルマッチ 髙阪剛が『UFC263』の見どころを語る
日本時間の6月13日(日)、アメリカ・アリゾナ州グレンデールのヒラ・リバー・アリーナで『UFC263』が開催される。
メインイベントはミドル級王者イズラエル・アデサニヤが、イタリアのマーヴィン・ヴェットーリを迎え撃つ3度目の防衛戦。さらにフライ級王座をかけたダイレクトリマッチとなる、デイブソン・フィゲイレードvsブランドン・モレノ戦も行われる。
この2試合の見どころを、「世界のTK」高阪剛に語ってもらった。
(左より)イズラエル・アデサニヤ、マーヴィン・ヴェットーリ、デイブソン・フィゲイレード、ブランドン・モレノ /Getty Images
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――『UFC263』のメインイベントは、イズラエル・アデサニヤvsマーヴィン・ヴェットーリのミドル級タイトルマッチ。王者アデサニヤは前回、2階級制覇を狙いライトヘビー級王座に挑戦したもののヤン・ブラホヴィッチに判定負け。1階級上とはいえ、初黒星を喫した再起戦でもありますが、この試合どう見ていますか?
「王者アデサニヤにとっては、ここは正念場だと思いますね。というのも、ヴェットーリとブラホヴィッチは、タイプ的にけっこう似通っているんですよ。前回、ブラホヴィッチはスタンドでプレッシャーをかけていって、途中でテイクダウンを奪い、グラウンドで体力を削ってアデサニヤに判定勝ちしましたけど、まさにそういう戦い方を得意としているのがヴェットーリなんです。」
――圧力をかけ、テイクダウンを奪い、グラウンドで削ると。
「いわゆるグラウンド&パウンドを得意とするタイプですよね。約3年前の前回は1~2ラウンドはヴェットーリが組みにいってもなかなかテイクダウンが奪えなくて、3ラウンドにようやく寝かせることができたんです。でもその後、スタンドに戻ったとき、アデサニヤ本来の動きができてなかったんですよ。だから、そこがお互いにとってのキーポイントなんだろうなと。」
――ヴェットーリがアデサニヤを寝かせられるかどうか。
「しかも、今度はタイトル戦で5ラウンド制なので、前回と同じようにヴェットーリが3ラウンド目でテイクダウンに成功して、べったり寝かせることができたら、4~5ラウンドも続けることも可能だと思うんですよ。そうなると、アデサニヤの判定負けという結果も考えられますよね。」
――前回も3ラウンドはヴェットーリが取って、テイクダウンを奪われて以降、アデサニヤの動きが悪くなっていたわけですしね。
「だからアデサニヤとしては、早めに打撃で仕留めたいところですけど、ヴェットーリはタフで体が頑丈。打たれてもあまり気にせずにガンガン前に出てくるし、サウスポーの構えから左ストレートをしっかり延ばしてくるので、そこで下がってしまったら、ケージに押し込まれて、テイクダウンを奪われてしまうかもしれない。」
――アデサニヤのような驚異的なストライカー相手だと、なかなか前に出られないものですけど、ヴェットーリは前回も打たれながら前に出ていました。
「そうなんですよ。ヴェットーリの前回の試合(今年4月10日のケビン・ホランド戦)も、途中からテイクダウンがおもしろいように決まって、終始グラウンド&パウンドで大差の判定勝ちでしたから。ヴェットーリはあの戦い方を変えないと思うので、アデサニヤがそれをどう処理するかが、この試合の肝になる気がしますね。」
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――アデサニヤにとっては、前回のヴェットーリ戦がスプリットの判定勝ちで、ブラホヴィッチ戦が判定負け。どんどん前に出てきて、テイクダウンを奪ってくる相手というのは苦手かもしれません。ブラホヴィッチ戦での結果を受けて、そこが克服できたかどうかが問われそうですね。
「だからブラホヴィッチ戦が、アデサニヤにとってどちらに作用するかでしょうね。幸か不幸か、同じようなタイプの選手なので。いい方で考えると、前回の敗戦から学ぶものがあって対策がしっかりできたとも言えるだろうし。悪い方で考えると、苦手意識がより強まった可能性もある。」
――ブラホヴィッチに、アデサニヤ攻略法が見つけられてしまった、ということにもなりかねないわけですね。
「だからヴェットーリは、自信をもって前に出てくると思います。それに対しアデサニヤは、ステップでかわしながらカウンターを入れてくるでしょうし、そういうところは天才的ですから。いくら打たれ強いヴェットーリとはいえ、アゴの先端やテンプルといった急所を打たれたら倒れますからね。アデサニヤはピンポイントで意識を刈りにくるんじゃないかな。」
――闘牛士のように、突進をかわしながらサーベルを急所に突き刺す、と。
「急所に刺さないと、何度でも向かってくると思うんですよね。だから、アデサニヤがしっかりピンポイントで仕留められるかどうかにかかってくると思います。」