大事故から再起を果たし、今もなお挑戦を続ける「車いすレーサー」の不屈の精神とは
青木拓磨は125CCバイクでレジェンドライダーの伊藤真一とバトルを繰り広げた(拓磨のツイッターから)
「レースがいつもの6月から9月に変更になり、所属するフランスのチームが今年は出ないことを決めた。コロナでどうなるか分からない状況だったので仕方がない。でも、自分自身は今年はフォーミュラEのサポートレースに出る予定。コロナに関する検疫の問題もあるけど、レースが行われるドイツまで行くつもり」
オートバイの世界でも最近になってライダー復帰を飾っている。昨年の鈴鹿8時間耐久レースとWGP日本GP(栃木・ツインリンクもてぎ)で競技車両のレプリカマシンによるデモランを実施。車両は手元で操作できる仕様で、モトGPで活躍した兄宣篤、元125㏄世界王者で現在はオートレース選手の弟治親と一緒にパレード走行した。
今年6月には元グランプリライダーで鈴鹿8耐で4勝を挙げるレジェンドライダーの伊藤真一を相手に模擬レースを敢行した。
レンタルバイクシリーズ「レン耐」の番外編としてホンダの125㏄バイクを使ってバトルを繰り広げた。場所はスポーツランドSUGO(宮城県)でミニバイクやカートなどの競技が行われる西コース。2人が一緒にレースをしたのは1997年の鈴鹿8耐以来、23年ぶりだった。
本人から走行映像をみせてもらった。走りはミラクルそのものだった。脊椎損傷で下半身がまひしているため、膝を開いての体重移動ができない。それでもハンドルを支える腕だけを使って巧みにコーナリングするなどハンディキャップを全く感じさせないライディングを披露した。
「走れるもんだなと思った。でも、おかげで次の日は腕がパンパンだった。伊藤さんとバトルができるなんて夢のようだった」
2輪のレースは事故死するリスクが高い。WGPでも過去30年で、若井伸之、永井康友、加藤大治郎、富沢祥也の4選手がレース中の事故で命を落とした。拓磨もテスト走行中に瀕死(ひんし)の重傷を負った。が、命だけは救われた。
おそらくリハビリ中は絶望の淵をさまよったはずだ。それでも不死鳥のごとく再起を果たした。誰をもしのぐ不撓(ふとう)不屈の精神が自分の中に宿ったからではないかと思う。これだけ飽くなき挑戦を続けるモータースポーツ界のアスリートを自分は知らない。都知事選候補の応援をしたということは、いずれは政界に挑むのではないかとさえ思ってしまう。彼の生き様をこれからも追いかけていきたい。
[文・写真/中日スポーツ・鶴田真也]
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