片頭痛(偏頭痛)という症状を知っていますか?

タグ: , 2025/9/30

[文:オクノクリニック | モヤモヤ血管による慢性痛治療(https://okuno-y-clinic.com)]

Q:片頭痛とは何ですか?

片頭痛は、頭の片側あるいは両側にズキズキと脈打つような強い痛みが生じる慢性的な頭痛です。頭痛発作の間はしばしば吐き気や嘔吐を伴い、光や音、においに敏感になる(光がまぶしく感じたり、騒音が辛く感じたりする)ことも特徴です。痛みは体を動かすとさらに悪化するため、しばらく動けなくなってしまうことで、仕事や日常生活に支障をきたすほどの痛みが特徴です。

片頭痛は、他に原因となる病気がない「一次性頭痛」と呼ばれるタイプで、日本では約1,000万人が片頭痛持ちだといわれています。特に女性に多く、有病率は男性の約3.6倍にもなります。10代から患者数が増え始め、30~40代の働き盛りに多くみられますが、50代以降になると次第に減少し、70代以上で新たに片頭痛に悩むケースはかなりまれです。

なお、「偏頭痛」と表記されることもありますが、医学的には「片頭痛」(片側の頭痛という意味)が正式な用語です。

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Q:片頭痛の症状は?他の頭痛(緊張型頭痛・群発頭痛)とはどう違いますか?

片頭痛の主な症状と、その他の代表的な頭痛との違いをまとめます。

■片頭痛(偏頭痛):

ズキンズキンと脈打つ激しい痛みが頭の片側(ときに両側)に起こり、動けないほどの強さになります。
しばしば吐き気や嘔吐を伴い、光や音に対する過敏症状(光がまぶしい、音がうるさく感じる)が現れます。このため、まぶしくて目を開くことができない、などの症状が生じます。
暗い静かな場所で横になりたくなるほどつらいのが特徴です。
患者さんの約3割に、頭痛が始まる前に視界の一部がキラキラ光るような前兆が生じることがあります。これは閃輝暗点(せんきあんてん)と呼ばれるものです。
発作は4~72時間程度続くことが多く、日常生活に大きな支障をきたします。

■緊張型頭痛:

頭や首・肩の筋肉のこりやストレスが原因で起こる最も一般的な頭痛です。
痛みは頭全体を締め付けられるような鈍い痛みで、片頭痛ほど強くなく日常動作は何とか行える程度の中等度の痛みです。
吐き気が出ることはあっても嘔吐することはほとんどなく、しばしば肩こりや首筋の張りを伴う点も片頭痛との違いです。
長時間同じ姿勢をとるデスクワークの後などに起こりやすく、慢性的な肩・首のこりが頭痛に波及しているケースもあります。
片頭痛持ちの方が緊張型頭痛も併せ持つことも珍しくありません。

■群発頭痛:

比較的まれな頭痛ですが、片側の目の奥をえぐられるような激しい痛みが特徴です。
年に1~2回、決まった時期(群発期)に集中して発作が起こり、群発期には1~2ヶ月の間ほぼ毎日、決まった時間帯に痛みが生じるのが典型的です。
痛みの強さは片頭痛以上で、「痛すぎてじっとしていられない」と言われるほど猛烈です。極めて強い痛みのために「のたうちまわるほど」と表現されることが多いです。
発作中は目の充血や涙、鼻水、顔面の発汗など自律神経症状を伴うことも多いです。
男性に圧倒的に多いのも群発頭痛の特徴で、有病率は1%未満と報告されています。

Q:片頭痛の原因は何でしょうか

片頭痛が起こる詳しいメカニズムは完全には解明されていませんが、現在の研究では三叉神経が何らかの誘因(トリガー)炎症や拡張が生じ、拍動するような頭痛が起こると考えられています。頭蓋内ではなく頭蓋骨の外にある頭皮の血管(浅側頭動脈や後頭動脈など)の拡張が関与しているという報告もあります。

片頭痛の誘因(引き金)として知られているものには、次のようなものがあります。

ストレスや緊張(心身のストレスが和らいだ週末に頭痛が起こるケースもあります)。
睡眠パターンの乱れ(寝不足や寝すぎ)。
ホルモン要因(特に女性では月経前後に起こりやすい)。
アルコール(特に赤ワインは誘因として有名です)。
特定の食べ物(チョコレート、チーズ、加工肉などがきっかけになる場合があります。ただしこれらは人によって違い、食べると必ず片頭痛が起こるわけではありません)。
感覚刺激(強い光や大きな音、強い匂いなど環境要因)。
天候の変化(低気圧が近づくと頭痛が起こる方もいます)。
こうした誘因が複数重なったときに頭痛発作が引き起こされることが多いです。誘因や症状の出方は人それぞれ異なるため、「自分の場合は何がきっかけで片頭痛が起こりやすいか」を把握しておくことも大切です。

Q:片頭痛はどのように診断しますか

片頭痛の診断は、症状の経過と特徴を詳しく聞く問診が最も重要です。医師は頭痛について次のような事項を確認します:

いつ頃から頭痛が始まったか、どういう状況で起きたか(例:朝起きたとき急に、特定の状況でなど)
頭痛の持続時間(4時間以上72時間未満が片頭痛の典型)
頭痛の頻度(月に何回か、週に何日か、ほぼ毎日か など)
痛みの性質や部位(ズキズキする痛みか、締め付ける痛みか、片側か両側か 等)
随伴症状(吐き気・嘔吐、光や音への過敏、前兆の有無 等)
市販薬を含めた鎮痛薬の使用状況と効果(効いたか効かなかったか)
生活習慣(睡眠時間、仕事やストレス、飲酒の有無 など)

これらを詳しく問診した上で、神経学的な診察(視力や顔面の感覚、手足の反射や筋力のチェック等)を行います。多くの場合、片頭痛は問診と診察で診断できますが、必要に応じて血液検査やMRI/CTなど画像検査も行います。これは、脳出血やくも膜下出血、脳腫瘍、髄膜炎といった命に関わる原因がないか除外するためです。こうした危険な疾患が否定され、頭痛の症状が国際的な診断基準に合致すれば片頭痛と診断されます。

普段から頭痛ダイアリー(頭痛日記)をつけておくと診断に役立ちます。頭痛が起きた日時や状況、痛みの程度、薬を飲んだか・効いたか、直前の行動などをメモしておき、受診時に医師に見せると大いに参考になります。

Q:片頭痛にはどのような治療法がありますか

片頭痛の治療は、急性期の対症療法(発作時の痛みを和らげる治療)と、予防療法(発作自体を起こりにくくする治療)の2本立てで行われます。

■急性期治療(発作時に内服するもの):

一般的な消炎鎮痛剤(バファリンやロキソニン、ボルタレンなど)でも軽い片頭痛発作には効果がある場合があります。
上記では十分な効果が得られない中等度~重度の発作には片頭痛専用の治療薬を用います。代表的なのがトリプタン製剤と呼ばれる薬で、血管を収縮させて片頭痛の痛みを抑える作用があります。トリプタン系薬剤は医療機関で処方される薬で、イミグラン、ゾーミック、レルパックス、アマージなどがあります。飲み込まなければならない錠剤だけでなく、口腔内で溶けてくれるものや、点鼻薬や自己注射による製剤もあり、症状や患者さんの希望に応じて使い分けます。吐き気が強いときは無理に飲まず点鼻や注射が有用です。
場合によって吐き気止め(制吐薬:プリンペランなど)を併用して症状を和らげます。

■予防療法(予防薬):

日常生活に支障を来すような重症例では、予防的な治療により発作自体の頻度を減らすことが検討されます。これは「片頭痛発作抑制薬」とも呼ばれ、βブロッカー(血圧の薬)や抗てんかん薬、抗うつ薬など片頭痛の起こりにくくする作用を持つ薬を毎日服用して頭痛の頻度・程度を減らす方法です。
効果不十分または副作用で内服継続が難しい場合には、抗CGRP抗体薬という新しい片頭痛予防薬の注射治療も選択できます。この注射薬は2021年に承認されたもので、月に1回程度の頻度で皮下に打つことで片頭痛発作を起こりにくくする効果が期待できます。エムガルディ、アジョビ、アイモビーグなどが知られています。

■動注治療

最近になって開発されている新しい治療法です。

頭皮を栄養する血管(浅側頭動脈や後頭動脈)の拡張が片頭痛の原因となっているという仮説に基づき、これらの動脈内に異常な拡張を減少させる薬剤を投与することで、片頭痛の症状を改善させる新しい治療法です。

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