【医師に相談】精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)とはどのような病気ですか?
Q:精索静脈瘤を放っておいても大丈夫ですか?
精索静脈瘤を放置することはおすすめできません。症状が軽いからといって放っておくと、痛みや違和感が慢性化したり、精巣の機能低下が進行してしまう恐れがあります。例えば、「夕方になると陰嚢が重苦しい」「長時間同じ姿勢でいると陰嚢が痛む」といった症状がある場合、それが毎日続くと日常生活の質(QOL)を下げてしまいます。
また先述の通り、精索静脈瘤は精子の質の低下と関連するため、放置することで不妊のリスクが高まります。実際、精索静脈瘤ができると時間とともに進行し悪化していくことが知られており、一度できた静脈瘤は自然には元に戻りません。精巣への余分な負荷がかかり続けると精巣組織がダメージを受け、精子を作る能力が徐々に損なわれてしまうのです。その結果、精子数や運動率の低下だけでなく、放置期間が長いと男性ホルモン(テストステロン)分泌の低下を招き、将来的に男性更年期障害(LOH症候群)の一因となる可能性も指摘されています。
以上のように、精索静脈瘤を放っておくことは痛みの慢性化や生殖機能・ホルモンへの悪影響を招く恐れがあります。症状が軽度でも一度は専門の医師に相談し、経過観察でよいのか治療すべきか評価してもらうことを強くおすすめします。特に将来的にお子さんを望まれる場合や現在不妊治療中で精索静脈瘤があると言われた場合は、放置せず適切な治療を検討すべきです。
Q:精索静脈瘤は自然に治ることはありますか?
いいえ、精索静脈瘤が自然治癒することは基本的にありません。一度生じた静脈瘤は先述のように血液の逆流によって維持・進行していくため、何もしないで元通りに治ることは期待できません。むしろ放置すると徐々に悪化する傾向があり、軽症だったものが年月とともに中等症~重症へと進行することもあります。
実際、一人目のお子さんは問題なく授かった男性が、その後年月が経って精索静脈瘤が悪化したために二人目不妊になるケースも報告されています。このように精索静脈瘤は自然には消失しませんので、「そのうち治るだろう」と様子を見続けるのは得策ではありません。症状が軽い段階であっても、適切なタイミングで医療機関を受診し、必要に応じた治療や生活上のアドバイスを受けることが大切です。
痛みがあるのに「経過観察」と言われました。本当に治療しなくてよいのでしょうか?
痛みの程度によっては、「いったんは」経過観察となる場合もありますが、症状が続くようなら再度治療を検討すべきです。精索静脈瘤の治療方針は症状の強さや患者さんの希望によって決まります。痛みがごく軽度で日常生活に支障がない場合、医師が「経過観察」(すぐに治療せず様子を見る)と判断することは珍しくありません。
実際、軽症の精索静脈瘤は命に関わるものではなく、精子やホルモンへの影響も軽微なことが多いため、そのまま定期的に観察する選択肢もあります。この場合、締め付けの少ない下着を着用したり、陰嚢を適度に冷やす・温めすぎないようにするなど生活上の工夫で痛みをコントロールできる場合もあります。
しかし、「痛みが続いてつらい」「夕方になると毎日不快」「将来的に不妊が心配」といった場合は、遠慮せず医師に再相談してください。経過観察中でも、症状が悪化したり生活の質に影響を及ぼすようであれば、治療を前向きに検討すべきタイミングです。特に精索静脈瘤による慢性的な痛みは、治療によって根本的に解消できるケースもあります。また、不妊の原因となっている可能性があるなら、放置するメリットはほとんどありません。「本当に治療しなくて大丈夫か」と不安に思われる場合は、その気持ちを主治医に伝え、治療の適否について納得いくまで相談することが大切です。必要であればセカンドオピニオンを求めてもよいでしょう。患者さんご自身が納得し安心できる形で経過観察ないし治療に臨むことが、長い目で見て良い結果につながります。
Q:精索静脈瘤の治療法を教えてください
根本的な治療法としては、日帰りでできるカテーテル治療(後述)と、メスを入れる手術(高位結紮術・低位結紮術)があります。
手術は、患側の精巣静脈を体内で結紮(糸でしばること)して遮断し、逆流を防ぐ方法になります。開腹または腹腔鏡下で行われ、最近では傷が小さい顕微鏡下手術(顕微鏡下低位結紮術)が主流です。静脈瘤そのもの(膨らんだ血管のコブ)を直接取り除くのではなく、原因である逆流を断つことで徐々に瘤を縮小させる手術です。手術時間は1~2時間程度、全身麻酔または局所麻酔で行われ、多くは日帰りまたは短期入院で実施されます。顕微鏡手術では再発率は低く(数%以下)抑えられ、術後3~6か月で精液所見の改善が期待できます。
Q:切らずに精索静脈瘤を根本的に治す方法はありますか?
日帰りで局所麻酔のみでできる体に負担の少ない治療がカテーテル治療です。血管塞栓術ともよばれます。この治療は、足の付け根(鼠径部)から非常に細いチューブ(カテーテル)を挿入し、痛みの原因となっている精索静脈まで進め、異常な血流が起きている血管にアプローチすることで、根本的な改善を図ります。
手術ではおなかを切ってアプローチして血管を外から外科用の糸で縛りますが、カテーテル治療では、血管の中にプラチナでできたコイルを置いて、逆流している血液の流れを調整します。血管の中に異物を置くというのは不安に感じる方もいるかもしれませんが、医療用のプラチナコイルは年間で非常にたくさんの数が使われており、また血管のなかでは血栓化して固まるため、いったん留置したコイルが動いたりすることは決してありません。
この治療は正常な血管には影響を与えず、目立った副作用もありません。またメスを使うような切る手術ではなくため時間も1時間ほどです。「手術は避けたい」「仕事や生活に影響を出したくない」とお考えの方にも適しています。
[文:オクノクリニック | モヤモヤ血管による慢性痛治療]
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