フレンチレストランから和食での修行を経て、素材を生かす料理を身につける 「料理人個人が評価される面白さ」
[文:食の専門家による出張料理サービス「シェアダイン」(https://sharedine.me/)]
外出自粛やリモートワークの普及により生活の中心が家庭へと移り、自炊の機会が一気に増えるなど、消費者の生活は一変しました。
コロナ禍で飲食業界の雇用不安が広がる中、店舗に頼らないニューノーマルな働き方として「出張シェフ」が注目されています。
出張シェフサービスを運営する「シェアダイン」では、コロナ禍の影響が出る以前の2019年と比較すると、飲食店出身のシェフの登録が急増しています。
コロナ禍をきっかけに出張シェフの活動を始めたシェフの中には、レストラン勤務の頃と比較して年収が2倍になったシェフや、年収1,000万円を目標とするシェフが出てきました。
今回は、「yahanシェフ」に出張シェフのリアルな話をお伺いしました。
yahanシェフ
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料理人としてのキャリアについて教えてください
専門学校を出てから、最初に入ったのが都内のフレンチレストランでした。もともと洋食が好きだったため、そのお店に決めたのですが、そのレストランの料理長をされていた方が、以前に和食の親方をされていた方だったのです。良い意味でその方の影響をかなり受けました。
例えば、その料理長は日本人向けに、日本の食材を使ったフレンチを作っていましたね。和食材をフレンチに取り入れるのが、とても上手だったのです。食材の活かし方というものをそこで学びました。私自身も日本の食材について、もっと勉強した方が良いと考え始めて、和食の修行を積むことを決意しました。
そのお店では3年超働き、当時の料理長のつてをたどって、帝国ホテルの中にある京料理「伊勢長」に移りました。
移ったお店はどのような経験を積まれたのですか
そのお店は、ホテルにテナントとして入居していたお店でしたが、新入りの私は3年間の下積みがあったとはいえ、小僧(見習い)と呼ばれていました。今までの洋食とは仕込みから何から違いました。魚一つとっても、洋食とは比べ物にならないくらい、和食のさばき方はクオリティが高いのに驚いたことを今でも覚えています。
料理は食材の下処理によって味がかなり変わってくるため、洋食の時に身についたクセを抜くのに苦労しましたね。また、和食は引き算と言われるなかでも、特に京料理は薄口で、ニンニクなど刺激の強い食材は禁止されていました。ですのでこのお店にいた4年間近く、そのような食材を口にしませんでした。それまで濃い味に慣れていたため、自分の舌も京料理で感覚が研ぎ澄まされました。この経験が私のベースになっていると感じています。
それから再びフレンチの世界に戻られていますが、飲食業界が抱える課題についてはどうお考えですか?
当時は27歳くらいだったと思いますが、もともとは洋食が好きでこの業界に入ったので、一通り経験は積んだと考え、洋食に戻りました。新宿のフレンチ「 Hyatt Regency 東京」に移りました。ホテルが運営していたこともあり、長時間労働や残業代が支払われないといった問題もなく、以前勤めていた時よりも労働状況は改善されました。ただ、飲食業界は町場のお店で働くときは特にそうですが、料理人はそのお店やオーナーのことが好きで「ここで働かせてください」と言って入って来るため、どうしても厳しい環境での働き方になるというところがありました。
以前は料理が好きな人ばかりが入ってきた業界だったため、飲食店側も料理に向いていない人は辞めてもらえばいいという世界でした。最近では労働時間の規制などを守る店が増えてきたことは良いことですが、逆に料理があまり好きでない人でも働ける労働環境になってきました。労働環境を改善しながら業界全体としてクオリティを保つことが今後の飲食業界の課題かもしれません。