ソフト・金メダリスト山田恵里の「心のマネジメント術」~変えられるものから変える~
変えられるものから取り組む
塚越 切り替えのうまさという点では、ソフトボールを始めたきっかけに女子は野球で甲子園に出れないからソフトボールに転向されたという記事も読みました。そこを嘆くのではなく、自分にコントロールできないことにとらわれても意味がないからと。そのような考えは大事にされている部分でしょうか?
山田 確かに変えられないものは変わらないので。そこにはとらわれないようにしていますね。
塚越 たとえば頭の中で、変えられるものと変えられないものがあって、変えられないものにこだわりすぎた時に、そこからどうやって意識をそらすようにしていますか?
山田 私は『変わらないからいいや』となりますね。諦めがいいと言いますか。それだったら変えられるものを変えようと。自分の考え方だったり、そっちを変えた方が早いかなって思うようにしています。
塚越 基本の感情のコントロールができているという証拠ですね。感情コントロールで大事な点は『変えられないもの』にこだわるんじゃなくて、『変えられるもの』をいかに変えて、状況を好転させることです。
山田 私は悪いほうに思いがいきたくないので、変えられるほうを変えたいと思うのですが、逆に『でも~』って悪い方向にいってしまうのは、どういう考え方に基づくものでしょうか。というのも立場上、色々な人の考えがわからないといけない立場にいるので、教えて頂けるとありがたいです。
塚越 色々なタイプの人がいらっしゃるんですが、不安や恐怖に負けちゃっている時というのは、悪い想像しかできないように頭の中がなっています。悪いようになることは考えられても、山田選手のように悪くならない方は全く思い至らないという状態です。
山田:どうやったらその負のイメージを断ち切れるのでしょうか。
塚越 不安感が強い人が多いので、安心できる要素を増やしていく。それを増やしたところで良い想像ができるようになります。安心を担保した上で、1番オーソドックスなやり方としては、解決した未来を一生懸命イメージしてもらうことですね。『魔法がかかって、ある日起きたら全て解決していて、薔薇色の世界にいる』というそこだけをまず想像してもらう。想像がうまくいくようになったら、『絶対にこれをやったら結果が出る』ようにスモールステップに分解して、『まずはここだけをやってみようか』とやらせてみる。その上で『ほらできるじゃん!』と相手を認めて実績と自信をつけてあげるという方法ですかね。山田選手のお話を聴く時間なのに、解説して申し訳ないです・・・
山田 いえいえ。なるほどですね。とても参考になります!
対談3回目となる次回は山田選手が「燃え尽き症候群」に陥ったときの話を深く掘り下げます。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。
塚越友子(つかこし・ともこ)
過去に自身で仕事中にうつ病を発症した経緯から、働く人のカウンセリングに注目。2008年に東京中央カウンセリングを開業。社会学修士号(社会心理学)教育学修士号(臨床心理学)。公認心理師・臨床心理士・産業カウンセラー。
山田恵里(やまだ・えり)
幼少期から野球を始め、高校入学と同時にソフトボールに転向。
高校卒業後、日立製作所に入社。日本リーグで本塁打王、打点王、ベストナインを獲得。
8連続安打のリーグ記録など卓越したバッティング技術から「女イチロー」の異名を持つ。2004年のアテネ五輪から代表入り、08年の北京五輪、今夏の東京五輪では共にキャプテンを務め、2大会連続金メダルに大きく貢献した。デンソー所属。