アスリートの不安・緊張対策に有効な「認知的再評価」リアプレイザルとは?
[文:スポーツメンタルコーチ鈴木颯人のメンタルコラム(https://re-departure.com/index.aspx)]
皆さんは、「試合前は不安でメンタルコントロールがうまくできない。」や「緊張している自分を落ち着かせたいが、なんだか落ち着かない。」などの悩みはありませんか。
今回は、第一戦で活躍するアスリートとは切っても切れない縁である、緊張や不安への対策として有効な、「認知的再評価」、リアプレイザルに関して、海外論文をもとに紹介していきます。
緊張で本番に弱いと感じるアスリートから、プレッシャーで押しつぶされそうになる感覚を抱えるスポーツマンまで簡単に応用可能で、パフォーマンス向上に期待ができる内容となっておりますので、是非参考にしてみてください。
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緊張を落ち着かせる深呼吸
「明日の試合は絶対に負けられない」「ここで決めれば逆転」など、プレッシャーと常に戦うアスリート。また、スポーツのみではなく、日常生活でも、「大勢の前でのスピーチ」や「大事な面接前」など人間であれば必ず感じる緊張感。緊張を抑えるため、一般的な対策として使われているのが、深呼吸です。
誰でも簡単に出来て、効果の高い方法として多くの人に利用されているのは、周知の事実でしょう。非常に便利な深呼吸は、不安で眠れない夜や、短時間で気持ちの高ぶりを抑えるのには有効ですが、長時間し続けられないのが悩みの種です。
認知的再評価「リアプレイザル」とは
そこで、深呼吸に変わる、不安・緊張対策として認知的再評価(リアプレイザル)という方法が、現代のスポーツサイエンス界では注目されています。これは、文字通り、物事の見方を変え、同じ身体反応を認知的に再評価する方法です。
簡単に例えると、緊張を抱える本番前という状況をネガティブに捉えるのではなく、「心拍数を上昇させ、身体は本番に向けて準備している」といった具合で、認知的に状況をポジティブに変化させていきます。
実際に多くのアスリートが、プレッシャーのかかる場面の前は、不安でなんだか落ち着きがなく、筋肉が少し痙攣している感覚まである状態を経験しているのではないでしょうか。
このような場面で多くは、一旦落ち着こうと深呼吸しますが、一時的な効果のみで、また落ち着きが無くなってしまいます。そのため、本番前での深呼吸は、あまり持続可能な有効性をキープできません。
ここで、認知的再評価(リアプレイザル)を利用し、筋肉のわずかな痙攣や心拍数の上昇など、自然に起こる身体反応を「再評価」していきます。
身体反応を「緊張や不安の現れ」「落ち着かせよう」と考えるのではなく、「いま、身体はパフォーマンスを上げるため、心拍数を上げ、血液を全身に送っている」「エキサイティングな試合に向け、自分はワクワクしてきている」など認知的(メンタル的)な捉え方を変えてみましょう。
簡単で手軽に出来る認知的再評価(リアプレイザル)ですが、気になるのがその効果です。そこで、スピーチを控える数百名の被験者に対して行った、ハーバード・ビジネス・スクールの有名な研究を見てみましょう。意外にも認知的再評価の科学的効果は大きいようです。