「最強PV老人」張本勲はなぜバズりまくるのか
日曜日のテレビは「いつも通りの風景」が心地よく感じられます。「サンデーモーニング」から「サンデー・ジャポン」(最近は「ワイドナショー」もいいですね)、「NHKのど自慢」あるいは「アッコにおまかせ!」からの「新婚さんいらっしゃい!」「アタック25」、さらには「笑点」「サザエさん」と長寿番組が目白押しです。
中でも「日曜朝の顔」といえば張本勲さん、その人でしょう。日本プロ野球初の3000安打達成者。日本プロ球界で唯一、500本塁打&300盗塁をマークした男。1990年には野球殿堂入り。物凄い実績を誇る野球人であることは疑いようがない事実ですが、こんな仮説も成り立つのです。
「張本勲の全盛期は、78歳になった今ではないか」と。
なぜならば、張本さんほど「数字を持っている」老人は今の日本でいないからです。
一例を挙げましょう。
日曜朝、張本さんの出番は8時45分。メガネ姿がいくつになってもソーキュートな唐橋ユミさんとともに、スタジオに現れます。オープニングから市民派、良識派のコメンテーターが国会やトランプ政権に苦言を呈した直後だけに、いくら正論といえども、ちょっぴり堅苦しい雰囲気に包まれているのも事実です。
しかし、張本さんの登場とともに穏やかな空気が流れるのはなぜでしょう。さっきまで厳しい表情だった関口宏さんも好々爺そのものに変わるのが分かります。
張本さんはやる気満々です。その特徴は大きく、以下の3点にあると言えます。
(1)簡潔に伝える
(2)必ず「爪痕」を残す
(3)準備を怠らない
まず(1)です。考えてもみて下さい。プロ23年間で3085安打も放ったレジェンド中のレジェンドですよ。卓越した打撃理論をお持ちであるのは明らかです。でも決して難解な持論を振りかざしたりはしない。悪い言い方をすれば乱暴ですが、ざっくりとしたコメントこそ、テレビ映えすることを熟知しているのです。
例えばアリゾナでキャンプ中の日本ハム・斎藤佑樹投手が打撃投手を務めた映像が流れた。ハリさんは言います。
「大きく期待する方が酷だから」
この時期、なかなか他の評論家が言いにくいことでも、ハッキリと言い切れるところが人気の秘訣です。
そして実は(2)が凄い。
日曜午前8時45分、メモを片手に一字一句を聞き漏らすまいと書き留めている人たちがいます。そう、スポーツ新聞も含めたネットニュースの記者です。張本さんはスポーツニッポンの専属評論家ですが、いつの間にか業界には「テレビでオンエアされた評論はその限りではない」という不文律ができていました。