コロナ禍に揺れるモータースポーツ界で日本人、日本メーカーによる「偉業」が相次いだ理由とは?
新型コロナウイルス感染拡大の影響で今季のモータースポーツはF1などを含めて大会中止や大幅な日程変更を強いられるなど大混乱を極めた。そんなシーズンでも実は日本人、日本メーカーによる偉業が相次いでいた。今季を振り返る。
【その1】琢磨がインディ500で2勝目
世界3大レースの1つに数えられる「第104回インディ500」(米インディアナポリス)で、ホンダの佐藤琢磨(43)=レイホール・レターマン・ラニガン=が3年ぶり2度目の優勝を果たした。複数回の勝利をしたのは史上20人目。
例年は5月の開催だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で8月に延期され、しかも無観客開催に。レース後には「このコロナ禍の中、多くの方々のサポートがあって今年のインディ500が開催できたことを感謝します」と喜びを表現した。
表彰セレモニーで話題となったのはグリコのポーズだ。優勝を祝して9月に大阪・道頓堀の名物看板「グリコサイン」が期間限定で琢磨バージョンとなって登場。両腕と片足を挙げるポーズをした画像が掲げられた。
インディ500で2度目の優勝を果たした佐藤琢磨(ホンダ提供)
【その2】中嶋一貴が伝統のルマンで3連覇
こちらも世界3大レースの1つとなっている「第88回ルマン24時間レース」(フランス)でトヨタの中嶋一貴(35)が3年連続で総合優勝を成し遂げた。
3連覇したドライバーは中嶋が達成するまで過去7人しかおらず、一緒にバトンをつないだセバスチャン・ブエミ(スイス)とともに歴史にその名を刻んだ。同じ年に日本人2人が世界3大レースを制覇するのは初めてだ。
ハイブリッド車両の最高峰カテゴリー「LMP1」のマシンはトヨタの2台だけ。身内同士の争いとなったが、実際はLMP1でノンハイブリッド仕様のマシンはBoP(バランスオブパフォーマンス)で優遇され、車両性能差はトヨタ車とかなり詰まっていた。コロナ禍でレースが6月から9月にずれるなど、シリーズ戦の世界耐久選手権も大幅に日程が変更されたが、トヨタ7号車の小林可夢偉ら3人が初めてシーズン王者に輝いた。
中嶋一貴がルマン24時間で3連覇(トヨタ提供)
【その3】モトGPを制したのはスズキの伏兵ジョアン・ミル
オートバイのロードレース世界選手権のモトGPでスズキがライダー、チームの2冠に輝いた。同チームで2年目のジョアン・ミル(23)=スペイン=が年間1勝ながらチャンピオンを獲得し、チームメートのアレックス・リンス(スペイン)も1勝でランキング3位に入った。
大波乱のシーズンとなったのはチャンピオン最有力と目されたホンダのマルク・マルケス(スペイン)が故障で戦線を離脱したことに尽きる。実質的な開幕戦となった第2戦スペインGP(ヘレス)で転倒し、右上腕を骨折。骨折個所をプレートで固定する手術を受けて第3戦アンダルシアGP(ヘレス)に強行エントリーしたが、無理がたたって固定部分が破損。その後は復帰することがかなわず、ノーポイントに終わった。
ホンダ勢のシーズン最上位はランク10位の中上貴晶。マニュファクチャラーズタイトルはドゥカティが獲得した。
モトGPではスズキのジョアン・ミルが初タイトル(スズキ提供)