元ソフトバンク絶対エース・攝津正の「心のマネジメント術」~やらないよりやる!~
「心理カウンセラー×アスリート」の対談により、日々の生活や仕事にも役立つ「心のマネジメント」をひもとく本連載。今回はソフトバンクで5年連続開幕投手を務め、沢村賞投手にも輝くなど、常勝軍団のエースとしてチームを牽引してきた攝津正氏に臨床心理士・公認心理師としてこれまで様々な悩みを抱える人をカウンセリングし、解決へ導いてきた心理カウンセラー・塚越友子氏が話を聞いていく。
どうしようもないことはどうしようもない
塚越 前回は試合中の切り替えとしてかルーティンを大事にしていたという話を伺いました。一方で、自分がミスをしてしまったときに試合後も引きずってしまうというお話もされていました。そのあたりの切り替えというのはどんな風にされていたんですか?
攝津 なかなかそこの切り替えってできていなくて。やっぱり、結果を自分で出せると、切り替えることができるので、逆に結果が出ないと1か月とかずっとモヤモヤしたまま過ごしていたかなと思います。
塚越 その結果が出せなくてモヤモヤしている気持ちっていうのはプレーに影響したりするんですか? それとも、そこは置いておけるものでしょうか。
攝津 モヤモヤが残っていてもプレーにはそこまで影響しないかなって思います。
塚越 普通だと、モヤモヤがあると引きずってしまい『またミスしたらどうしよう』など通常のこともできずに、全部が崩れちゃう場合が多いように感じます。そこが、攝津さんの中では起きないってことは、何か工夫していたことがあったんでしょうか?
攝津 そうやって引きずることもあるんですけど、『なんとかなるだろう』くらいの感覚なんですよね、常に。『どうしようもないことはどうしようもない』って割り切れるというか、あまり深く考えていないところもあって。
塚越 実は自信があるひとの発言なんですよね。心理学的にいうと適応的な自己肯定感と言います。『無理なものは無理。できることはできる』というように、健康的な自己肯定感やいわゆる世間でいう自信の持ち主って『なんとかなる』と思えちゃうんですよね。だから、たとえミスをしても、プレーには影響しないということが起きていたのかなという気がしました。
攝津 そうなんですね。こういう人って、少ないんですかね?
塚越 少ないです。そして少ないからこそ、攝津さんがあれだけの成績を残せたんだと思いますよ。メンタルコーチ要らずですね。
攝津 やはり選手によっては精神的に追い込まれて、よくいうイップスみたいに投げられないということもあるんですが、僕はあんまりそういうことはなかったですね。
やらないよりはやったほうがいい
塚越 その『なんとかなるさ』とか、どうしようもないことは割り切れると言う心持ちと言うのは、いくつぐらいから持っていたものなんでしょうか。
攝津 ある程度大人になってから、特にプロに入ってからそういう考えが強くなったかなと思います。そもそもプロ入りしたのも27歳になってからなんです(社会人野球・JR東日本から08年のドラフト5位でソフトバンクホークスに入団)年齢的にもそれも正直迷いました。でも、そこも『やらないよりはやった方がいいだろう』というなんとかなるさと言う気持ちがあったからプロにも入ったと思います。プロに入ってからは、自己責任と言うか、自分が成績を残せなければダメな世界ですから、より一層、自分の中で『できること』と『できないこと』と言うのははっきりさせていたかなと思います。