元ソフトバンク絶対エース・攝津正の「心のマネジメント術」~大病を経験して変わったこと~
「心理カウンセラー×アスリート」の対談により、日々の生活や仕事にも役立つ「心のマネジメント」をひもとく本連載。今回はソフトバンクで5年連続開幕投手を務め、沢村賞投手にも輝くなど、常勝軍団のエースとしてチームを牽引してきた攝津正氏に臨床心理士・公認心理師としてこれまで様々な悩みを抱える人をカウンセリングし、解決へ導いてきた心理カウンセラー・塚越友子氏が「病との向き合い方」について話を聞いていく。
白血病を受け入れるまで
塚越 慢性骨髄性白血病を公表され、現在闘病中ということですが、この病気を受け入れるようになるまでの気持ちのコントロールの面で野球を行っていた現役時代の経験が生きたところはありますか。
攝津 そもそも僕は、野球を辞めてからすごく楽しいんですよ。現役中に子供が生まれてからの家族の時間とか、今まで色々なものを犠牲にしてきたので、引退後の何をしても今は楽しいって状態です。だから病気に関しても、確かに死ぬ可能性があるものですが、それでも『大丈夫だろう』『別に俺は死なないな』というのがどこかであるんです。だから、毎日薬は飲まないといけませんが、どちらかというと、病気も忘れるくらい、気にしていないんですよね。
塚越 どこかで気持ちが切り替わった時期などはありますか。
攝津 病気が発覚してから1ヶ月くらいはずっと落ち込んでいましたけど、自分の中で『(病気は)治るものなんだ』ということを理解してからは、変わりましたね。病気に対しての恐怖とかそういうものは、たまに思うときはあるんですが、そんなに日常の中で思うことはないかなと思います。
塚越 皆さん病気の告知を受けた当初はショックがあって、『なんで私が、なんで俺がこんな目にあわなきゃいけないんだ』と思いながらも病となかなか向き合えない感じや悲しみに暮れる感じ、怒りという感情をいったりきたりしながら、病を受け入れ、やりたいことをやっていこうという心のプロセスを踏む場合が多いです。攝津さんは、告知のショックから切り替わったきっかけは何かありましたか?
攝津 2人目の子供が生まれてからだと思います。1月に病気を公表して2月に生まれました。小さい赤ちゃんを見たときに、このままグチグチやってたらダメだなと思ったんですよね。冷静に考えたら、その成長を見られない可能性はあるんですが、日々子供が大きくなって家族と過ごす時間があると、このままじゃダメだなと思うことがあって。だったら、できることを楽しんでやりたいなという思いが強くなってきて、立ち直れたという感じですかね。