ラグビーワールドカップで堀越正己が感じた日本代表の真の「ONE TEAM」への進化
WOWOWにて6月7日(日)放送の1991年大会「アイルランドvs日本」と6月28日(日)放送の「日本vsジンバブエ」の2試合を、ともに戦った吉田義人さんとダブル解説した元日本代表の名スクラムハーフ堀越正己さんに話をうかがった。
堀越さんが、これまでほとんど見返すことがなかったという試合映像を見て感じたことや、現在の日本代表に対する思いを語った。
写真:WOWOW
──ご自身が出場した1991年大会の映像を見て、解説した感想からお願いします。
「当時一緒にプレーした吉田義人さんの話を隣で聞いていると当時のことが蘇ってきて、すごくわくわくしながら見ていました。アイルランド戦は『ミスがなければもっとクロスゲームになっていただろう』という悔しさがありましたし、ジンバブエ戦は『セットプレーが安定すると日本代表はここまで対等に戦えるのか』ということが確認できて良かったです」
──負けた試合の映像はまず見返さないそうですが、敗れたアイルランド戦はどのような心境で解説していましたか?
「負けたこともあって鮮明に思い出せなかったところが、映像ではっきりと思い出すことができました。もしその前のスコットランド戦も私が先発で出場していれば、アイルランド戦でプレー面も心の部分も修正できたかもしれない、という思いがあらためて蘇りました。もっと身体を張れたのではないか、もう少し走れたのではないかという反省もあり、それが次のジンバブエ戦の勝利に繋がったのだろうと思います」
──ジンバブエ戦では、日本代表は堀越さんの前半18分のファーストトライを皮切りに計9トライを挙げて快勝しました。この試合についてはいかがでしたか?
「宿沢広朗監督の分析ではプロップのアレックス・ニコルズとフランカーのブレンダン・ドーソンの2人がキーマンで、特にニコルズはプロップとは思えないような走りを見せていました。フィジカルが強く、バックスのキックもよく飛んでいた印象があります」
──ご自身のトライの場面はいかがでしたか?
「相手の選手に左手一本で引っ張り戻された記憶がありました。映像を見てもその通りで、戻されたことでボールを地面に付けられていなかったのではないか、という心配がずっとあったのですが、リプレイを見たところグラウンディングできていました。もう少し強く引っ張られていたらボールを落としていたかもしれませんが、放送で吉田さんに『しっかりボールを両手に持ち替えている』と褒めていただきました。それが良かったのかなと思います」
──あらためて、当時の宿沢ジャパンはどんなチームでしたか?
「宿沢監督とキャプテンの平尾誠二さんの下、よくまとまっていました。僕らの年代にとって平尾さんは憧れの存在でしたし、神戸製鋼の選手、同志社大学出身の選手が多かったことでチームとしてまとまりやすい状態にありました。すごくいい雰囲気でチームが一つになっていたと思います」
──現在の日本代表はそこからどのあたりが大きく進化したと考えていますか?
「今の日本代表はプロに近い形になり、当たり負けしない身体作りをしてきた結果、フィジカルの部分が世界に追いついてきました。僕らの頃は、特にアイルランド戦がそうでしたが、フィジカルがそこまでは追いついていませんでした。そして一番大きく違うところは、長い時間をかけて準備するようになったことです。宿沢ジャパンは宿沢さんの働きかけで年間トータル60日ぐらいと、その前の時代に比べれば非常に長い期間練習していた記憶があります。それによってチームが以前より一つになれたのではないでしょうか。今はもっと長い期間集まることでさらに進化し、本当の『ONE TEAM』になれたのではないかと思います」