井上尚弥の「カラダの強さ」の秘密を大橋会長が独白!松坂大輔との共通点も

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 そのひとつが食や栄養素へのこだわりです。プロデビューから2年ほどは、「とんかつを食って勝つ!」といったように、食べたいものを食べるというスタンスでした。そのため、体調を崩したり、ちょっとした故障をすることも珍しくなかった。それが、同じジムの先輩にあたる八重樫などがサプリメントを摂るなど、徹底したコンディショニングをしている姿などを見て、自分もサプリメントやプロテインを精力的に取り入れるようになったのです。

 当然のことながら、すぐに効果が出たわけではありませんが、階級をスーパーフライ級に上げた15年あたりから、明らかに体つきが変わり、コンディションを大きく崩すこともなくなりました。

 今でこそ屈強な肉体を手に入れつつある井上ですが、故障という経験も自分の体とより向き合うことになった大きな転機だったと言えます。14年に右拳を故障し、その後、手術をしたことで1年間のリハビリ生活を余儀なくされたことも一因としてありますが、復帰直後に腰を痛めた事で練習を見直すようにもなったのです。

 大きなところで言えばスパーリング。それまでの井上は、試合が近づくと12ラウンドを1日おきにこなすというハードなトレーニングを課していました。15年9月に彼の地元・座間で開催される防衛戦に向け、世界ランカーを4人招聘し、ひとり3ランドずつスパーリングを行ったことで、知らないうちに井上の体が悲鳴を上げていた。

公開スパーリングでもストレートしか打てないほど腰の痛みが増し、試合直前には立っているのもやっとの状態。当日のリング上でも、周りの方からすれば「うまくディフェンスをしているな」と映ったかもしれませんが、実際には試合中でも腰を伸ばしていたり、セコンドの我々が「これは負けるかもしれない」と不安になるようなコンディションだったのです。

 その試合は判定勝ちで切り抜けることができましたが、12月に開催される河野公平との防衛戦は怖かった。相手はしつこいボクシングをしてくるし、井上自身も「もうちょっと時間を空けたほうがいい」と言っていたくらいでしたから。それでも、6ラウンドTKOで勝ってしまうところが彼の強さなのでしょうが。この故障はスパーリングの回数など、練習を見直す良いきっかけとなりました。あの2試合は、井上を語る上で、ターニングポイントと言えるでしょう。

 そうは言っても、トレーニングにリミッターを設けないのが井上というボクサー。今年10月にWBSS(ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ)の試合を観にいった際も、2週間前に試合をしたばかりで、本来、練習をしなくてもいいのに「練習がしたい」と言い出すような男。井上にとってボクシングとは、もはや生活の一部なのです。





[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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