“エリート”ではなかった三笘薫 「ドリブルは上手かった男」はいかに世界屈指のタレントへ変化を遂げたのか

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いまや日本サッカー界の“顔”とも言える三笘。世界にその名を轟かせる男の源流を辿る。(C)Getty Images

 今オフにドジャースと10年総額7億ドル(約1015億円)の巨額契約を締結した大谷翔平。日常的に話題を提供する彼の存在感によって、野球界は大きな盛り上がりを見せている。

 では、サッカー界に実績や人気、知名度で二刀流スターに匹敵する選手は誰か。さすがに彼ほどとまでは言えないまでも、三笘薫(ブライトン)はいま、日本サッカー界で最も”お茶の間に浸透している”選手ではないだろうか。

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 20年に入団した川崎フロンターレで1年目から主戦として活躍。21年8月にベルギーへ渡った(1年目はブライトンからのレンタル)頃は”サッカーファンの中では有名人”という域を出なかったが、ここ1年間で三笘の名は飛躍的に知れ渡った。カタール・ワールドカップでは『三笘の1ミリ』が話題になり、彼がプレーするプレミアリーグでは世界屈指のDFたちを手玉に取るドリブルを披露。華麗なパフォーマンスで得点に絡む三笘は、いまや名実ともに日本サッカー界を代表する選手と言って良い。

 しかし、もともと三笘は突き抜けたエリート選手ではなかった。結論から言えば、彼は大学で一気に伸びた選手だった。

 小学生から高校生まで川崎の育成組織に在籍していた三笘は、もともと秀でたドリブルのスキルは持っていた。当時、指導を行っていた森一哉氏(現南葛SC U-18監督兼アカデミーダイレクター)が語った言葉がとても印象的である。

「薫は逆を取るのが昔から上手かったですね。たぶん、人に見えないものが見えているんですよね。例えば、ちょっとした重心の移動が見えて『もうこっちには動けないな』と判断してそこに入っていく、みたいな。敵が次にどう動くかの身体の動きと、おそらく心も見えているのかもしれないですね。だから先が読めて、スルスルスルっといける」

“足技を見せてゆさぶって抜きに行く”のではなく“逆を取る”のが三笘のドリブルだ。ユース年代でも逆を取る能力は突出していた。しかし、前述したように誰がどう見てもスーパーな選手だったかと言われると、首を立てに振れなかったのも事実だ。上手いが、強さや怖さがまだ足りない。そういう印象だった。

 その不足部分を補えたのが、筑波大学時代だと、筆者は考える。

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