なぜ長谷部誠は評価され続けるのか? ドイツで異彩を放つ39歳が語った“成長”「喜びを感じていたい」【現地発】

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選手としてどうあるべきかを示すだけでなく、人としてどうあるべきか

今季はベンチを温める日々が続くが、それでも長谷部はピッチに立てば、全力でチームのために汗をかく。(C)Getty Images

 昨季、長谷部に「自身としてはどこまでさらに成長できると思っているのか?」と尋ねてみたことがある。彼の返しはこうだった。

「うーん、そうですね。今シーズンもやはりプレーヤーとしての学びはあったし、そのなかでまだまだ自分の中でもっとできるなっていう感覚がある。それを持っていないとそれ以上は望めないと思う。それは引き続き来シーズンに向けてやっていきたい。こういう日々の練習でも競争があるなかでサッカーができることに、やっぱり非常に喜びを感じています。この喜びを来シーズンも感じていたいなっていうのはあります」

 ブンデスリーガのベテラン選手との間でも39歳の日本人の去就は話題になる。昨年4月に行われたボルシアMG戦後のミックスゾーンで、長谷部がこんな話をしてくれた。

 試合後にボルシアMGのキャプテンのラルス・シュティンデルと談笑していたことを報道陣に尋ねられた長谷部は、「そうですね、彼とは(指導者の)ライセンスを一緒にやったんで。そういう関係性です」と明かしたうえで、「『いつまでやるんだ』みたいな(苦笑)。いつもそんな感じで言ってきますけどね」と笑った。

 ドイツで16年目となった今季は新加入のドイツ代表DFロビン・コッホが安定感のあるパフォーマンスを発揮している影響もあり、長谷部の出番はここ数年で一番少ない。フランクフルトの調子が上がらない秋口に起用され、それをきっかけに勝てるようになるという過去数シーズンのように出場機会は訪れないのかもしれない。

 それでも長谷部は現状を受け入れ、味方のゴールに本気で喜び、失点に本気で悔しがる。そして短い時間でもピッチに立てば、自分にできる最大限のプレーを見せていく。まさにプロ選手としての理想像を体現するのだ。プロフェッショナルとはどういうことかを示す模範としてフランクフルトの幹部からの評価が高いのはうなずける。

 ちょっとした活躍で浮足立って勘違いしがちな若手選手たちが、長谷部の立ち振る舞いや考え方を間近で触れられることがどれだけ貴重なことか。彼らは選手としてどうあるべきかを示すだけでなく、人としてどうあるべきかの生き字引とともにロッカールームで過ごすことができるのだから。





[取材・文: 中野吉之伴 Text by Kichinosuke Nakano]

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