衝撃ダウンから這い上がった井上尚弥が揺さぶった勝負師の感情 実戦遠のくドネアが漏らした“宿敵への本音”

井上と2度の激闘を繰り広げたからこそ、ドネアは特別な感情を持って、カルデナス戦を眺めていた。(C)Getty Images
いわゆる“メディア側”に立っていたドネア
刺激的であり、ドラマチックな防衛戦は、大衆を熱狂させた。現地時間5月4日に米ネバダ州ラスベガスで実現したボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)のそれである。
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まさかの出だしからの貫禄の防衛だった。2回に挑戦者のラモン・カルデナス(米国)が放ったカウンターの左フックを被弾した井上はキャンバスに沈んだ。4年ぶりに米国に舞い戻った怪物の予期せぬダウンは場内を騒然とさせ、SNSで話題沸騰となった。実際、この興行を主催した米大手『Top Rank』社がXで発信したダウンシーンを載せた投稿は、116万回以上の再生をされた。
文字通り衝撃的だったダウン。しかし、井上はそこから王者の矜持を見せつける。カルデナスとの距離感を見事に修正した4回以降は、立ちはだかっていた難敵を圧倒。仕留めに掛かった7回にダウンを奪うと、8回には猛ラッシュで畳みかけ、試合を終わらせた。本人が「証明できたかな」と微笑みながら語ったリカバリーは、試合を劇的なものへと昇華させた。
まるで漫画の世界で描かれるような復活劇。世界を舞台に「主人公」ぶりを発揮した井上には、多くのボクシング・マニアや識者が刺激を受けたわけだが、それはかつての“宿敵”も同様だった。元世界5階級制覇王者のノニト・ドネア(フィリピン)は、目の当たりにしたライバルの防衛に溢れ出る思いを抑えつけられないほどの高揚感を抱いていた。
米スポーツ専門局『ESPN』のコメンタリーとして、カルデナス戦を追っていたベテラン戦士は、いわゆる“メディア側”に立っていた。そんな普段とは異なる視点から眺めた井上の試合は、何よりも輝いていた。米ボクシング専門サイト『Boxing Scene』のインタビューでドネアは、率直な心境を打ち明けている。