大谷翔平、八村塁の他にもいる米スポーツで活躍中の日本人とは?
「NASCARの一員としてようやく認めてもらえた気がする」
ファクトリーの外観
さて、本題の服部代表のことも触れたい。もともとはレーシングドライバーで、1995年に米国に渡り、インディ500にも出場。選手としてトラックシリーズにも参戦した。2008年、44歳の時にHREを旗揚げ。入門カテゴリーを振り出しに参戦を続け、13年にトラックシリーズに昇格。昨年、念願のシリーズ初優勝を含む計6勝を挙げ、初チャンピオンを獲得した。今年もシリーズ連覇を目指して継続参戦中だ。
「昨年が参戦11年目だった。NASCARの一員としてようやく認めてもらえた気がする」
NASCARは米国内で独特のレース文化をつくりあげてきたため、閉鎖的な面が強い。トヨタも2004年にNASCARにトラックシリーズで初参戦したが、それまでは米国メーカーのマシンしか出場が認められておらず、米国以外のメーカーは事実上、門戸が閉ざされていた。「メイドインUSA」のタンドラを用意してようやく参戦が許された経緯がある。
外国出身力士のパイオニアでもあった高見山と重なる部分は多い
フル参戦中のトラックシリーズで使われるトヨタ・タンドラ
「大相撲で言えば、外国人力士のような立場だと思っていただければ分かりやすいのでは。郷に入っては郷に従えと言うが、その業界になじんで、信用してもらうためには時間もかかる」
外国出身力士のパイオニアでもあった高見山と重なる部分は多い。現役時代にどっぷりと角界に溶け込み、一躍、人気力士の仲間入り。布団のCMに起用されると「2倍、2倍」のフレーズが話題になった。現役引退後は自身の部屋を興し、同じハワイ出身の曙を横綱まで育て上げた。
服部代表も苦労が多かったようで、外国人オーナーチームという「におい」を消し、あくまで他のチームと同じ存在であることを強調。現地スタッフも日本人は服部代表のみで、有力チームと遜色のない報酬を用意したという。
今年から新たなチャレンジ
デイトナを走行するHREのトヨタ・スープラ(NASCAR提供)
今年から新たなチャレンジを開始した。2番目のカテゴリーでもあるエクスフィニティシリーズへの再参戦だ。2014、2015年にスポットで数戦に出場したことはるが、「あの時はトラックでも成績を残しておらず、チームの体制もしっかりと固まっていなかった」と振り返る。
しかし、昨年、トラックシリーズを初制覇したことで機は熟した。今年からトヨタ・スープラがシリーズに初登場されたのも追い風となり、7月5日の第16戦(米デイトナ)に4年ぶりにエントリー。スープラに搭載されていた外注のトランスミッションが壊れるという不運で惜しくも予選敗退となったが、今年はあと4戦にエントリーする予定。来年はフル出場を狙っている。
「将来、最高峰のカップ戦にステップアップして勝ちたい。エクスフィニティに出るのは、その夢をかなえるためのステップ。有力チームは600人体制でやっているところもある。今はアルバイトを含めて現地の従業員は32人。いずれは200人規模にしたい」
チームはトラックシリーズのマシンにつけているカーナンバーは16。これは自身が1995年に米国に渡ったときに大リーグにデビューした野茂英雄の背番号にあやかっているという。ちなみにエクスフィニティシリーズでは既に他チームが16番を使っていたため、数字をひっくり返して61番を選んだ。
服部代表はアメリカンドリームを今もはぐくみ続けている。
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[取材/写真 東京中日スポーツ・鶴田真也]