初戦劇的勝利の侍ジャパンに見えた課題 要所で頼った「過去のデータ」とは
13年ぶりとなる東京五輪の野球競技が28日、福島で幕を開けた。野球日本代表の侍ジャパンがドミニカ共和国を4-3の逆転サヨナラ勝ちで撃破。終盤までビハインドを背負う展開からの土俵際での粘りに、多くのファンは喜んだが、その戦いぶりには疑問が残ったのも事実だ。
多くのファンの首をかしげさせたのが、先発した山本由伸の降板タイミング。0-0という均衡状態で6回88球と余力を残しながら、2番手の青柳晃洋へスイッチ。すると青柳が2点を先制され、戦況は一気に劣勢へと傾いた。
建山投手コーチは試合後に「100球前後か6回まで、という想定だった」と明かしている。山本は決勝トーナメントでも先発や、最終版では救援での起用があってもおかしくない。3カ国総当たりの1次リーグは、全敗しても決勝トーナメントへ進めるという今大会。初戦でエースに負担を強いないというのは、大会全体をにらんだ起用法といえる。
一方で所属する阪神ではほとんど先発起用しかない青柳の救援投入は物議を醸した。しかも両打ちの多いドミニカ共和国で、青柳が対した打者6人のうち、左打席に立ったのが5人。左打者から3安打されての2失点だった。
首脳陣が頼ったデータとして思い当たるのが、青柳の今季の左右別被打率。右打者とは145打数33安打の被打率・228なのに対し、左打者には206打数43安打の被打率・209と、左打者をむしろ得意としている。横手投げの変則右腕の青柳にとって、一見して左打者は天敵に映るが実情は逆だったわけだ。左打者の外角に逃げるシュートやシンカーが武器の青柳は、今季は右打者よりも左打者に対していい成績を残してきていた。