青木真也を突き動かす原動力「悪あがきしながらでも勝ちたい、生き延びていたい」、青木真也×大山峻護スペシャル対談2
人間なんて離れてくっついての繰り返し。一回一回の揉め事は気にしない
青木:大山さんってマッチメイクの時、毎回用意された相手の名前を言われて、それに対して「はい」って返事して終わりでしたか?
大山:僕の場合はそうでしたね。青木選手はマッチメイクどうしているんですか?
青木:僕は毎回揉めていた印象ですね。嫌がっていたわけじゃなくて。
大山:青木選手といえば、柔術世界王者のビトー・『シャオリン』・ヒベイロとの一戦が印象的ですけど、あの試合はどういうマインドだったんですか?
(柔術世界王者のシャオリン選手に寝技で勝負すると宣言していたにもかかわらず、試合では終始スタンドでの攻撃を続け、青木選手が判定勝ち。会場からブーイングが起きた試合)
青木:あれはもうこのカードでいくからって言われて、激揉めしましたけど、やりましたよ。本当にやりたくなかった試合でしたね。だって、僕が勝つならおもしろくならないから。尚且つ、グラウンド戦になったら僕が不利だから。あの時は試合前から運営側に対して「絶対におもしろくならないから!」って言いましたよ。
大山:そんなエピソードがあったんですね!青木選手のすごいところは、俯瞰力なんですよ。現役時代からそれができるって尋常じゃないこと。僕は自分が勝つことしか頭が回らなかったけど、自分の試合を客観して見ることができるってすごいこと。
青木:試合終わって控え室に戻ったら、運営側の人が血相を変えてやってきたから、「だからおもしろくならないって言っただろ!」って言ってやりましたよ。向こうも怒ってきましたけど、それがやりたかったんですよ。「だから言っただろ!」「ほら見てみろ!」みたいなことをやりたくて格闘技をやっていたので。
大山:青木選手だけですよ、そんなこと言えるの(苦笑)。
青木:そうですか?俺は何とも思わないです。スタッフと揉めて日本離れたけど、2年後くらいに会った時は普通に「こんにちは」って挨拶して、普通に話しましたよ。人間なんてそんなもんですよ。結局、離合集散なので、離れてはくっついての繰り返し。お互いのメリットが一致したらまたやるって、そのくらいの話なんですけど、みんな人間関係をナーバスに捉えすぎていますね。だから、一回一回の揉め事はそんな気にしない方がいいですよ。
試合に負けても、感情を揺さぶったもん勝ち
大山:青木選手の人生ストーリーを見ているとおもしろいですよね。早稲田大学の柔道部から学生のうちにプロ格闘家になって、卒業後は静岡県警行ったのにすぐ辞めて、プロ一本。修斗、PRIDE、DREAM、ONE Championship、RIZIN行って、DDTプロレスリングもやって、本当におもしろいなぁって思いますよ。いい意味で裏切ってきます。
青木:コンテンツのおもしろさって、落差なんですよ。ずっと出しているとおもしろくないので。あとは感情の揺さぶり、アップダウンですね。喜ぶ、怒る、悲しむとか、悪くてもいいんですよ。「青木が負けた」とかで悲しんでくれるのでいい。どれだけ感情を揺さぶれるかが重要ですね。
大山:感情の揺さぶりっていうのは青木選手のキーワードですよね。以前、青木選手がインタビューで、ベストバウトはK-1王者だった長島☆自演乙☆雄一郎戦って言ってたんですよ。ミックスルールの試合で、青木選手有利のMMAルールのラウンドで自分がKOされた試合をベストバウトって言えるのはすごいなって感じたんですよ。
青木:いまだにあの試合は感情の揺さぶった度合いでいうと一番かなと思いますね。あの時、僕が負けたことに喜んで、魔裟斗さんが解説席から絶叫したんですよ。他の観客もみんなそう。それだけ観客は僕に感情を揺さぶられているから、僕の勝ちだなって。大山さんのベストバウトは何ですか?個人的にはハイアン・グレイシー戦が最高でしたね。
大山:引退してから一番ほかの人に言われるのがピーター・アーツ戦ですね。大晦日の試合で、超有名選手相手に僕が一本勝ちした試合なので。でも実は、負けた試合だけど「ハイアン戦印象的でした」と言われると嬉しいですね。
青木:当時のハイアンってスパイス効いているんですよ。ああいう選手がいるから、格闘技やりたいと思いましたね。血気盛んじゃないですか。大山さん、腕折られた上に、暴言吐かれていましたよね?
大山:その前の試合で僕がヘンゾ・グレイシーに判定で勝ったんですけど、そのリベンジで弟のハイアンがきて。一族の執念を感じましたね。自分の腕を折られる音が聞こえました(苦笑)。