成長を証明した“日本人初の快挙” 独1部でもがく町野修斗が見出す“世界で生きる道”「日本にいるときより成長してる」【現地発】
点が取れなくとも、うつむかずに前を向きながらプレーをし続けてきた町野。(C)Getty Images
課題にずっとブレることなく、淡々と向き合った25歳
ふつふつとした思いを胸に抱き、点が取れなくても、試合に勝てなくても、たとえスタメンで出れなくても、不安や葛藤を拭い去って、町野はポジティブに戦い続けてきた。必ずまた点が取れる、チームを助ける活躍ができると信じて、自分と向き合い続けてきた。
これまでの取り組みが確かに実り始めたのを感じさせたのは、先月5日のマインツ戦(ブンデスリーガ第28節)だった。
当時3位につけていた好チームを相手に、町野はスペースにタイミングよく顔を出してはパスを呼び込み、味方の攻撃に繋げていく。そして自身でシュートまで持ち込むシーンも量産。1-1の引き分けに終わった試合後の表情はかなり晴れ晴れとしていた。
「個人的にも前でけっこう起点になれたし、最後パスが出てくれば決定機というシーンも何個かあった。順位表で見たら(キールは)最下位ですし、焦りというのもあると思いますけど、やることはここから上がっていくしかない。今日のようなゲームをできれば、非常にチャンスはあると思います」
前述したホームでのボルシアMG戦もそうだった。得点シーンだけではなく、ポストワークもスムーズで、効果的だった。相手がアプローチできないようにボールを引き出し、対応や味方の動き出しを見ながら、ダイレクトで捌き、スペースへとパスを繋いでいった。
「点取れてない中でも手応えというのはあった。身体の当て合いのところとか、ボールを収めるところはできてた部分。自信はありました」
得点に絡むのは、点取り屋として最大のアピールポイントなのは間違いない。だが、そこへのプロセスなく、シュートに絡む頻度を増やせない。ましてモダンサッカーではハードワークとハイインテンシティはどの選手にも要求される。どれだけの距離を走ろうとも、チームのためのタスクをしっかりこなした上で、オフェンスでも発揮できなければ、次のステージには行けない。
町野はその課題にずっとブレることなく、淡々と向き合った。そしてエゴイスティックになることもなく、器用貧乏になることもなく、自身の成長とチームのタスクのなかでバランスを見出しながら、最適解を見出そうとしている。
そういえば、ラップ監督について、本人がこんなことを言っていたことがある。
「僕たちの監督は練習でいい選手を使います。それは1シーズン通してわかっている。練習から本気でやらないと、試合で良くても使ってもらえない。日々の練習からやる必要があります」
妥協を許さず選手と向き合い、成長に導く指揮官との出会いは選手キャリアの中でとても重要だ。そしてラップ監督も町野の結果だけではなく、その成長を喜んでいたのがとても印象的だった。
「いまの彼のプレーを見ていると、このチームで選手が成長できることがよくわかると思うんだ」
J1の湘南から鳴り物入りで渡独して約2年。町野の成長はまだ始まったばかり。ここからさらにどんなステップアップをしていくのか。期待は膨らむばかりだ。
[取材・文: 中野吉之伴 Text by Kichinosuke Nakano]
【関連記事】「公平さは失われた」ACLEで相次いだ東アジア勢の衝撃大敗 “サウジ勢贔屓”の異質な体制に韓国メディアは苦言「横浜は落ちた」
【関連記事】高校サッカーからドイツへ――過酷な挑戦を決めた福田師王の“現在地” 今季出場40分に20歳の点取り屋は何を思う【現地発】
【関連記事】「韓国はプライドを捨てて、日本に学べ!」Jも知る元韓国代表が嘆き 日本から後れる母国サッカー界の“低レベル化”を糾弾






