「30歳でJR職員の予定」が30歳で沢村賞投手になった元SB攝津正、「引退後は野球以外の競技を極めたい」
2018年シーズンで福岡ソフトバンクホークスを引退した攝津正さん。秋田経法大付高、JR東日本東北を経て、2008年にドラフト5巡目でソフトバンクに入団。プロ入り1年目から勝利の方程式として70試合に登板、最優秀中継ぎ投手、新人王のタイトルを獲得し、4年目にはエースとして最多勝、最高勝率、沢村栄治賞のタイトルを手中に収めた。5年連続の開幕投手を務めるなど獅子奮迅の活躍を続け、全力で駆け抜けたプロ野球人生の10年間を、フリーアナウンサーの田中大貴さんが聞いた。
現役時代は演じている部分もあった
田中:引退されて約半年が経ちましたが、近況を教えてください。
攝津:野球がない生活、楽しいですよ。野球が嫌いでストレスだったというわけではないですが、子供の頃からずっと野球しかしてこなかったので。休みもなくて、世間でいうゴールデンウィークも経験したことがなかったですからね。この前の10連休とか、初めての体験でしたよ。野球がなくて寂しい気持ちもありますけど、楽しいという気持ちの方が上回っています。世間がどういうふうに動いているのかというのが見えておもしろいですね。
田中:当時は世間の流れを気にするようなことはなかったわけですよね?
攝津:そうですね、やっと世間の流れに乗ったという感じです。現役の時は決められたスケジュールのなかで、結果を出さないといけないわけですから、必死でしたね。世間を見渡す余裕がなく、プレッシャーの方が強かったです。
田中:今年の開幕戦の時に、自分がユニフォームを着てそこにいないんだ、というような気持ちはありませんでしたか?
攝津:キャンプの時はありましたね。でも、だからって体を動かそうとは思いませんよね。やっぱり、ゆっくりしたいという気持ちが強かったですね。
田中:時間の過ごし方は全然違いますよね?
攝津:そうですね。ゴルフとか釣りとか、それまで行きたくても行けなかったけど、今は時間もあるので楽しんでいます。野球とは他の競技で、プロまでとはいかないですけど、そこまで突き詰めてやってみたいという気持ちはありますね。
田中:プロの釣り師?(笑)野球以外にも磨き上げたいなという?
攝津:釣りはなかなか(苦笑)。ゴルフとか、付き合いで誘われることも多いですし、自分の中でこれちょっとおもしろいなというのが見つかってきましたね。プロのレベルとまではいかないですけど、もう一度イチからやってみたいなという気持ちはありますね。
田中:そういう風に突き詰めるというよりは、のんびりしたいのかなと思っていました。遊びを本気でやるタイプですか?
攝津:のんびりしたい気持ちはありますけどね。野球の方はもうトレーニングもしなくていいですし、ちょっとやれたらいいやって思っています。草野球でいいんです。野球以外のことで言うと、釣りとかゴルフとかですかね。ダーツは昔ハマっていましたけど、もう自分の目標を達成したので、満足しています(笑)。興味があったら結構凝るタイプですね。
田中:引退されて何度か解説の仕事をされていますが、いかがですか?
攝津:全然話せなかったですね(笑)
田中:いや、しっかりと話せていたので、すごいなと思いました。穏やかな口調で、先の試合展開も見据えながら話してくれるので、僕なんかが言うのもアレですが、すごくいい解説者になると思います。
攝津:相手に理解してもらうって難しいですよね。選手の時は自分の感覚で全て話してしまう部分が大きかったんですけど、それを噛み砕いて話さないといけないのが難しいです。
田中:外から見て冷静に見られる部分はありますか?
攝津:現役時代は夢中でやっていましたからね。それこそ田中さんにも言われましたが、試合前は話しかけづらい雰囲気があったと思います。でもそれは、演じているような部分もあったのかなと思います。極力、他のことに気を使いたくない。野球だけやりたい。マウンドで出し切りたいという思いが強かったです。でも裏を返せば、当時そこまで余裕がなかったと言うことなんですよね。