復活の剛腕が掴んだ“新境地” ハマの切り札となった入江大生が誓う恩返し「改めて1人じゃ何もできない」【独占】
寄り添い続けた投手コーチが目を細める成長
小杉投手コーチはオーストラリアへの武者修行にも帯同し、リハビリ期間中も近い距離で寄り添い続けた存在でもある。当然ながら離脱前よりも変化したフォームにも関与した。
「動作のところもバイオメカニストの人とフィードバックしながらやりましたね。ショートアームにすることのメリット、デメリットのも話しながら、下半身の使い方や前足の膝がちょっとホーム方向に流れてしまう癖があったので、しっかり受けれるように角度をちゃんと保って、床反力をうまく利用して投げれるようにみたいなところもやってました」
苦心の末に進化を遂げた入江について「絶対やればパフォーマンス上がるからって話をして。今スクワットとかベンチプレスもやってますし、太ももとかすごくなりましたね」と目を細める小杉投手コーチは愛弟子の成長を語る。
「ベンチ外れる日もそうだし、投げた日でも絶対にトレーニングを欠かさないようにやろうって約束してるんですよ。マツダスタジアムでのセーブシチュエーションで失敗したじゃないですか? 本当はメンタル的にやりたくなかったでしょうけど、あいつはあの日もちゃんとウエイトやってますから」
努力の成果もあり、自他共に認める順調なスタートを切った。それでも本人に満足感はない。「できることとか、やりたいことは少しずつできるようになってきたんですけど、まだやっぱり追い求めるものはまだまだ上のところにあります」と気を引き締める。
今の課題は、「変化球の精度と再現性がまだちょっと低いので、そこは改善しなくちゃいけない部分だなと思ってます」と言うフォークの落ち幅。小杉投手コーチも「やっぱりフォークの質をあげた方がいい」と認め、「今はやっぱちょっと、バックスピンがちょっとかかっちゃっていて、なんか落ちないツーシームみたいな感じ」と指摘する。
「スピードも速いから146キロくらいまで出ちゃう。彼のストレートのスピードが155くらいなので、その90%で考えたら140いかないぐらいの球速帯で、変化量も縦の変化量をマイナスに持っていけたらいいってところですね。
あとはストレートがちょっとカットっぽく入るんですよ。それを考えたら『ジャイロフォークの方がフィットするよ』って話をして毎日取り組んでいるんです。数値的にも良くなってきてるし、本人もフォークボールで空振り取れてきているので。ちょっとずつ成功体験を積んでるところですね」
さらに入江は「初球や2球目はすごい大事になってくるんで。3球種、4球種あった方がバッターも嫌ですしね。自分もバッター経験が長かったので、対戦するピッチャーが入り江だったらどういう待ち方するかなって考えた時に、ツーサイドピッチングだとちょっときついなと思います」と、ストレートとフォークに続く、時に決め球となり得る新球種の取得も視野に入れる。
暗いトンネルを抜け、成長を続ける剛腕は、怪我を経て「人間的な成長の部分が大きいと思いますね。少し気持ちが大人になったと思いますよ」と精神的な上積みを語る。続けて「改めて1人じゃ何もできない。支えられてここまで野球やってこれているので、もっと感謝しないといけないなと思ってますね。やっぱそれに尽きると思います」と深い謝意とともに、恩返しを誓う。
リリーバーとしての役割は多々ある。だが、今や抑えの切り札となった入江は「常にマウンドに上がったら、自分が1番だと思って投げてきましたから。それは続けていきたい。ピンチの場面でも、どんな場面であっても、目の前の1試合1試合で自分の実力を発揮していきたいと思います」と任された場面で全力を尽くすと宣言する。
苦しいリハビリ生活の中で見ていた熱い夢の続きは、今まさに始まったばかりだ。
[取材・文/萩原孝弘]
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