犯人扱い?現地で「琢磨タタキ」の中で発揮した強靭なメンタルで佐藤琢磨が今季2勝目
琢磨「自分はラインを変えていない」、「逆にロッシが上げてきた」
ナイトレースとなった決勝では最後までクリーンファイトを演じた(ホンダ提供)
一方の琢磨は「自分はラインを変えていないし、ロッシ側にも動いていない。逆にロッシが(ラインをアウト側に)上げてきた」と真っ向から反乱。責任の所在を巡ってSNSなどで大論戦となった。所属チームのレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングも選手の名誉を守るため琢磨の車載映像をチームの公式ツイッター上に公開し、ハンドルをイン側に切っていないと訴えた。
ロッシは27歳の若手米国人で年間ランキング上位でチャンピオン争いを繰り広げている。一方の琢磨は参戦10年目の大ベテランでF1でも表彰台に乗った実力者ながら、米国人が相手だけに、どうしても悪者にされがちになる。現地メディアは琢磨に非があると断じているところばかりだ。
琢磨の強靱なメンタル
そこで注目したいのは琢磨の頑なで強靱(きょうじん)なメンタルだ。クラッシュに巻き込まれて宙を舞ったフェリックス・ローゼンクビスト(スウェーデン)らが無事だったことに対してお見舞いの言葉を真っ先に発表したものの、事故に関しては敢然と身の潔白を主張。ロッシに対しては謝罪する姿勢をみじんも示さなかった。
日本人は大ごとに発展するのを避け、すぐに「ごめん」とわびてしまうものだが、琢磨自身は「ロッシが寄せてきた。映像をしっかりと見てほしい」と言っているのだがら、間違っても頭を下げることはない。それどころか、琢磨たたきにさらされても、決して萎縮することなく、次のレースで意地の勝利を飾った。
モータースポーツの世界は年々、安全性が向上しているとは言え、ハイスピードで戦うスポーツに変わりはなく常に危険と隣合わせだ。特にオーバルコースは外側にランオフエリアがないため、コントロールを失えば、簡単に壁のえじきになってしまう。
もちろん、オーバルの壁には「セーファーバリアー」と呼ばれる衝撃吸収構造の安全障壁が設けられているが、時速300km以上でぶつかる恐れもあり、命の保証はない。だから、インディの選手は決して無茶な走りをしない。コース上でも、あうんの呼吸でお互いの信頼関係を保ちながらバトルをする。
「きつい数日間を過ごしたが、こうやって勝つことができた。この勝ちは大きい。(ポコノでの接触劇は)映像などの情報が限られていたことで、正しい判断をしてもらえない状況になっていた」
琢磨は勝利した直後に、こんな言葉を発し、世間を見返した。実力のあるものを率直に認めるのも米国文化のいいところ。これで周囲の雑音はおそらく消えるに違いない。
[文/東京中日スポーツ・鶴田真也]
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