髙阪剛「UFC234」の展望を語る ウィテカーvsガステラム、アンデウソン・シウバvsアデサニア etc.

タグ: , 2019/2/2

日本時間の2月10日(日)、オーストラリア・メルボルンで『UFC234』が開催される。

メインイベントは現在9連勝中の王者ロバート・ウィテカーに、元王者マイケル・ビスピン、ホナウド・ジャカレイを破り勢いに乗るケルヴィン・ガステラムが挑戦するUFC世界ミドル級タイトルマッチ。

ロバート・ウィテカー 写真:Getty Images

 さらに、かつてミドル級絶対王者の名をほしいままにしたレジェンド、アンデウソン・シウバが3年ぶりにオクタゴンに復帰し、総合格闘技15戦全勝の超新星ストライカー、イズラエル・アデサニアと対戦する。

この注目の2試合の見どころを、WOWOW『UFC-究極格闘技-』解説者としても知られる「世界のTK」髙阪剛に語ってもらった。

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相手の動きを読むには?観客の声は? 松田宣浩、堀口恭司、山田恵里 アスリート座談会2(https://cocokara-next.com/athlete_celeb/athlete-talk-discussion-02/)

「ウィテカーのリカバリー能力は、世界で最もレベルの高いUFCの中でもナンバーワン」

ケルヴィン・ガステラム 写真:Getty Images


——まずは『UFC234』のメインイベント、王者ウィテカーvs挑戦者ガステラムのUFCミドル級タイトルマッチについて聞かせてください。王者ウィテカーは現在9連勝中、ミドル級では負けなしですが、その強さの秘密はどのあたりにあると思いますか?
髙阪)ウィテカーは全体を通してタフな選手なんですが、とくにリカバリー能力が高いんです。スタミナももちろんあるし、打撃の攻撃力もすごい高いものを持っていることに加えて、相手の打撃を食らってから立て直すのが非常に早いんです。そこが相手からすると驚異だと思います。

――これまでも、現在ミドル級ランキング1位のロエル・ロメロをはじめ、攻撃力には定評があるトップコンテンダーたちが、倒すことができなかったわけですもんね。
髙阪)そのロメロとの試合も、昨年6月の『UFC225』でやった時なんかは、途中で何度かダウンを奪われて、しばらく脚がいうことをきかないくらいのダメージだったと思うんですが、そこをしのぎきりましたからね。普通、ダウンするぐらいのダメージを受けたあと、ロメロのような爆発力がある選手に畳み掛けられると、身体もそうですけど心が折れるんですよ。それがウィテカーの場合、そこから立て直して、逆に打ち返して追い込んでいきますから。ウィテカーの崖っぷちから戻ってくるタフさは、世界で最もレベルの高いUFCの中でもナンバーワンだと思いますね。

――「土俵際」で最も強い男がウィテカーだと。
髙阪)裏を返せば、UFCチャンピオンクラスの中では比較的、隙が多い選手でもあるんです。当然、打撃を喰らわないようにして闘ってはいるのですが、ウィテカーは前傾姿勢の構えなので、顔がどうしても前に出るため、パンチをもらいやすいんです。おそらく、それは本人も認識しているので、蹴りを多用しているのも、顔に打撃をもらわないようにするための方法の一つとして、見出した部分もあると思います。

――遠い間合いでも闘えるように、蹴りを多用したスタイルになっていると。
髙阪)それでも、やっぱり打撃をもらってしまうことが多々見られるんです。そうすると相手は、「ここがチャンスだ!」と思って攻め込んでいくわけですが、ウィテカーのリカバリーが早いために、逆に攻め疲れをしてしまう。そういったことが起こってるんじゃないかと思います。

――仕留めるチャンスだったはずなのに、自分の体力が奪われて、一転してピンチに陥ってしまうと。
髙阪)だから、あれは「ウィテカーマジック」ですよね。相手からすると、「ヤッター!いける!」と思ったあと、どん底に叩き落とされるわけですから。これは精神的にも相当なダメージを受けると思います。脳にダメージを受けると、どうしても脚に力が入らなくなるから、パンチも軽くなってしまうことが多いんです。でもウィテカーの場合、逆に後半になるほど、強いパンチを打ってくることがある。それは相手にとって脅威ですよ。

――そんな王者ウィテカーを倒すための、挑戦者ガステラムが取るべき対策とは何でしょうか?
髙阪)おそらくガステラムサイドも、そういうことを認識した上で試合のプランを立てていると思います。ここ最近のガステラムは、技術がまとまってきているイメージです。わかりやすく言うと、綺麗な打撃を打つし、綺麗なタックルをやるし、洗練されたMMA(総合格闘技)をやれるようになってきた印象があるんですよね。特にまっすぐ伸ばしてくる左のストレートとか、ものすごくいいと思います。

――マイケル・ビスピンをそれでKOしましたし、ホナウド・ジャカレイからも決定的なダウンを奪ったりと、決定力もある印象を受けます。
髙阪)だからタイミングが合えば、ウィテカーをとらえることができる瞬間もあると思うんです。ただ、ウィテカーを一発でKOするというのは、なかなか考えにくいところがありますが……。

――ほかの選手なら、一気にKOまで持っていけても、ウィテカーはそこからが強いわけですからね。
髙阪)だからガステラムが、一度ラッシュをしのがれたあと、どういう攻撃を仕掛けていくのか、どういう対策を練ってきているのか。そこが僕としては、注目すべきポイントのひとつだと思っています。

――どんな二の矢、三の矢を用意しているのか、ということでしょうか。
髙阪)とはいえ、5ラウンド制の試合で、後半の4~5ラウンド目が伸びてくるという選手はなかなかいないので、ガステラムサイドからすると、対策が難しい試合になることもまた間違いないと思います。ガステラムはこのところ、非常に状態がいいので、自分の試合をやりきって勝ちたい、チャンピオンになりたいと思っているはずです。そこを貫けるのか、それともウィテカーにグシャグシャにされるのか、その辺がポイントだと思います。

――でも、ウィテカー相手に自分の試合をやりきって勝ったら、これは本物ですよね。
髙阪)もしこれに勝って、3連勝目でチャンピオンになれば、相当な自信になりますよね。それにガステラムはUFCですでに10戦以上こなしながら、いまだ伸びしろを残していると思われる節がある。だから、その高いポテンシャル、潜在能力がさらに開花したら、すごいことが起こるんじゃないかと思っています。

――このところ一気に伸びてきた、「未完の大器」であるガステラムが、どこまで覚醒するか、という部分も注視すべきポイントであると。
髙阪)そうでしょうね。ウィテカーは自分の闘い方がしっかりと確立されていますから。勝負の行方はガステラム次第だと思います。

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