【UFC275】元RIZINライトヘビー級王者プロハースカがUFC3戦目で王座挑戦 “世界のTK”はこう見る!
(写真左より)グローヴァー・テイシェイラ、イリー・プロハースカ、ヴァレンティーナ・シェフチェンコ、タイラ・サントス/Getty Images
日本時間の6月12日(日)、シンガポール・カランのシンガポール・インドア・スタジアムで『UFC275』が開催される。
UFCナンバーシリーズのシンガポール初開催となる今大会。メインイベントは王者グローヴァー・テイシェイラに、元RIZINライトヘビー級王者のイリー・プロハースカが挑戦するライトヘビー級タイトルマッチ。日本のファンも大注目のこの一戦の見どころを“世界のTK”髙坂剛さんに語ってもらった。
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イリー・プロハースカ/Getty Images
――日本でもRIZINライトヘビー級王座を獲得するなど大活躍したイリー・プロハースカが、いよいよUFC王座に挑戦しますね。
「プロハースカはUFCに来て3戦目でこのチャンスをつかんだわけですから、すごいことですよね。」
――ただ、ヴォルカン・オーズデミア、ドミニク・レイエスというトップランカーをしっかりKOしての文句なしの王座挑戦でもあります。
「勝ち方も衝撃的でしたからね。だから、もしかしたらトップコンテンダーに連勝したという結果だけでなく、プロハースカのファイターとしての特性的なところも評価したんじゃないかというフシもあるんですよ。というのも、プロハースカはこれまでのUFCライトヘビー級にはいないタイプの動きができる。簡単に言うと、ドミニク・クルーズとかTJ・ディラショーの重量級版という気がするんです。」
――変幻自在の高速ステップでバンタム級に革命を起こしたふたりのような動きが、ライトヘビー級でできると。
「プロハースカは、あんなにデカいのにステップを使うし跳ねるし飛ぶし。なおかつ相手の見えないところから打撃が飛んできて、全局面で倒すものを持っている。このタイプって、世界のトップ選手が揃った今のUFCライトヘビー級でもちょっと見当たらないな、と。だから、もしかしたらUFCサイドも“こいつは面白いな”“さらに化けるんじゃないか”と感じて、次々とチャンスが与られた部分もあったんじゃないかと、自分なんかは思ってるんですけどね。」
――マイケル・チャンドラーは、元ベラトールライト級王者としてアメリカでも知名度抜群だったから、2戦目でいきなりUFCライト級暫定王座決定戦のチャンスが与えられたのもわかりますけど。プロハースカの場合、それまでアメリカではほぼ無名だったわけですからね。
「またプロハースカは、すごく武道的な戦いをしようとしているように見える。本人の中ではまだ構築中だと思うんですけど、相手に触らせずに自分の攻撃を入れることをやろうとしてるんじゃないかと思うんですね。だからこれまでの試合を見ても、打ち合いになっているように見えて、じつは打ち合いになっていない。相手のパンチは空振ってるのに、プロハースカのパンチだけが当たっているとか、そういうことが起こっている。
とくに前回のドミニク・レイエス戦はそうだったなって思うんですよ。お互い打撃をやり合って見える場面もあったけれど、試合後のプロハースカの顔を見ると、ほとんど傷がついてなくてきれいなんです。ということはパンチをもらってないし、もらったとしてもスリッピング・アウェーなどの技術、動きを使ってダメージを逃している。その上で、自分はダメージがない状態で相手を斬る、そんなことをやろうとしている感がありますよね。」
――それをジョン・ジョーンズとスタンドで互角以上の闘いを展開したドミニク・レイエス相手にやっているわけですからね。
「1ラウンド後半から2ラウンドにかけて、レイエスのほうが“どうすりゃいいんだよ?”という感じで追い込まれていたので、相手がどう攻めたらいいかわからなくなることを、プロハースカは試合の中で起こしてるんじゃないかな。
プロハースカがRIZINで藤田(和之)とやったとき、自分も(藤田の)セコンドに付いたんです。あの時もいろいろと策を練ったんですけど、試合の途中に“これはどうすりゃいいんだ!? 捕まえるのは無理だな”って思うような状況にさせられてしまいましたから。」
――重量級の中で抜群のテイクダウン能力を持つ藤田選手でもそうだった、と。
「プロハースカは動きが止まらないのと、攻撃の強弱が頻繁に変わるんですよ。普通、強打を打つ時というのは、やはり出力を大きくするために若干スピードを落とさなきゃいけなかったりもするんですけど、プロハースカは速い動きの中で急に強い打撃が来たりする。これは相手にとって休む暇もないし、本当に厄介な選手でしたね。」