月経を知れば生き方も変わる② ~自分に合った方法でPMSや生理をコントロール~
多くの日本人女性が抱えている「月経」、つまり「生理」に関する悩みと、心と体に起こる不調。生理中の不快な症状だけでなく、生理前から起こるさまざまな不調をPMS(月経前症候群)、PMSよりも精神的な不安定さが際立つ症状はPMDD(月経前不快気分障害)とされ、女性特有の現代病とも言われています。
前回の記事では、生理を起因として起こるさまざまな症状と、自分の体と心の状態を記録することの重要性をご紹介しました。今回は、生理中の不調解消や、PMSの症状を改善する方法のひとつ、低用量ピルの服用について、スマルナ医科歯科レディースクリニックOSAKAの中村葵先生にお話を伺いました。
低用量ピルで体調コントロールができる
Q :生理前や生理中の体調不良は、なぜ起こるのですか?
中村:「おもな原因は、ストレスや急激な体重変化などによるホルモンバランスの乱れなどに原因があると言われています。また、子宮内膜症、子宮筋腫などの疾患がある場合には、生理痛が重かったり、経血量が多かったりと不調を訴える方は多いです。2020年の夏は、新型コロナウイルス感染症、外出自粛や生活環境の大きな変化など、今までとは異なるストレスを抱えている人も多いため、生理前や生理中の不調を感じている方も増えている印象です。」
Q :生理中の不調、PMS・PMDDの改善方法はありますか?
中村:「前回お話した通り、まずは自分の体と心と向き合い、毎日の検温、生理サイクル、症状などを記録して、起きている変化を把握しましょう。そして、もし、生理前から不調がある場合は、産婦人科やレディースクリニックといった病院で専門医に相談してください。妊婦さんや不妊治療のために通う場所というイメージが強いかもしれませんが、私自身は、生理やPMSについても気軽に相談できる場所でありたいと思っています。実際に、私のクリニックには生理やPMSに関する悩み、避妊、妊娠したかもしれないと不安でいらっしゃる方もいらっしゃいます。最近は、20代の方も少しずつ増えてきましたし、よくよく話を聞いてみると、実は生理やPMSで悩んでいるという方がとても多いんです。一人ひとりに合わせた治療や対処法をお伝えしますが、私は、生理痛やPMS、PMDD、避妊には、低用量ピルの服用を選択肢のひとつとして提案しています。」
Q :低用量ピルとはどのようなものですか?
中村:「低用量ピルは2種類の女性ホルモンが含まれているお薬で、体内のホルモン量を調整する作用があり、服用により生理周期が安定します。さらに、子宮内膜を薄くする作用があるため経血量が減少して、生理痛の改善、さまざまな不調の解消にも効果があると言われています。生理中やPMSによる不調改善を目的に服用している方からは、『生理痛が軽くなった』『生理がくるのが怖くなくなった』など、体と心の不調が改善されたという声が寄せられています。また、卵巣がんや子宮体がんのリスクは軽減されると言われています。
日本では、避妊薬や月経困難症の治療薬として用いられることが多くあることから、低用量ピルに抵抗がある世代の方、副作用が気になる方、避妊目的の服用だと性が乱れるといった社会への影響を考える方もいて、なかなか普及が進んでいないのが現状です。しかし、100年前と比較すると、現代女性は初経年齢の低下、出産回数が減少していることもあり、生理の回数は10倍に増えています。1ヵ月に1回・7日間、年間、一生と考えると…生理前や生理中の不調は見過ごしてはならないと思います。低用量ピルの服用により、生理の日が予測できたり不調が軽減されたら、心にもゆとりが生まれ、不安の解消にも繋がります。また、医師に相談して服用することで、大切なイベントや旅行、試合の日と生理が重ならないように、コントロールすることもできるんです。女性が毎日を快適に過ごすために、低用量ピルの服用も選択肢のひとつだと考えています。」