呼吸こそ、自律神経を直接コントロールできる手段!肺と自律神経の密接な関わりとは
呼吸こそ、自律神経を直接コントロールできる手段!
では、自律神経のバランスを整えることの大切さをご理解いただいたところで、「肺」との関係についてお伝えしていきます。
肺が司っている「呼吸」は1日に2万回以上も行われています。
実はこの呼吸こそ、自律神経を直接コントロールできる手段なのです。
この呼吸も、自律神経の支配下にあります。
私たちが「呼吸するぞ」と意識しなくても、寝ている時にも呼吸できているのは、そのためです。
その一方で、呼吸は血液循環、体温調整、免疫機能、消化呼吸などと違って、意識的にその質を変えることができます。
ここが非常に重要なポイントです。
呼吸をする時に上下に動く横隔膜の周囲には、意識しなくても呼吸ができるように自律神経が密集しています。
ゆっくりと深く呼吸をすると、横隔膜が上下に大きく動きます。
横隔膜の動きが大きくなればなるほど、副交感神経の働きが高まります。
その反対で、速くて浅い呼吸をしていると、副交感神経の働きは低いままです。
つまり、普段している呼吸をゆっくり深いものに変えていけば、副交感神経のレベルが上がり、自律神経のバランスを整えることに繋がるわけです。
また、肺を収めている胸腔には「圧受容体」という場所があります。息を吐く時間が長ければ長いほど、この圧受容体に圧力がかかり続けます。
専門的な話になりますが、圧受容体には静脈の血流量をコントロールする働きがあり、圧力のかかる時間(息を吐く時間)が長ければ長いほど、血流量が増え、副交感神経の働きが高まるシステムになっています。
すなわち、ゆっくりと、深く、息を吐く時間を長くすることが副交感神経を高めるために、もっとも効果的な方法なわけです。
以前お伝えした「肺活トレーニング」をすると、呼吸筋の柔軟性が回復し、自然と深い呼吸ができるようになります。
その結果、自律神経のバランスを効率よく整えることが可能になるのです。
さらに、深い呼吸をして肺胞にたっぷりの酸素を取り込んでいけば、肺そのものの機能も回復していきます。
すると、肺の免疫力が高まり、感染症や肺炎の予防も期待できるようになります。
そして、その健康効果は「肺」だけにとどまりません。
肺の機能がよみがえり、深い呼吸ができるようになると、自律神経のバランスが整い、免疫力アップのほか、全身に様々な好影響を与えます。
是非「肺活トレーニング」も活用しながら、普段の呼吸を見直して深い呼吸を意識し、呼吸から自律神経を整えていきましょう。
※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
【関連記事】腎臓内科医が教える「コレステロール値の注目ポイント」。大切なのは善玉と悪玉の比率
【参考文献】
『最高の体調を引き出す超肺活』(アスコム刊)
著者:小林弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授。日本体育協会公認スポーツドクター。
順天堂大学医学部卒業後、同大学院医学研究科修了。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手、アーティスト、文化人へのコンディショニング、パフォーマンス向上指導に関わる。
監修:末武信宏(すえたけ・のぶひろ)
国立岐阜大学医学部卒業。さかえクリニック院長。第88回日本美容外科学会会長。
社団法人 先端医科ウェルネスアカデミー副代表理事。
日本美容外科学会認定専門医としてアンチエイジング診療を行うかたわら、順天堂大学医学部非常勤講師としてスポーツ医学の研究をおこなっている。