子どもを望む人が知っておくべきこと。 妊娠率アップに関連する栄養素とは?
不妊治療に光明。ビタミンDの作用に新たな可能性
不妊に悩む方、将来子どもを望む方が、妊娠しやすい体づくりのためにできることも、最新の研究でわかってきました。そのひとつがビタミンDの摂取です。
ビタミンDは、免疫機能を高め、健康な骨を維持するために欠かせない栄養素として知られ、さらに、ウイルスや細菌などの感染を予防する作用も確認されたことで、コロナ禍で一段と注目を集めた栄養素です。このビタミンDの新たな作用として、妊娠率や出生率への関連性が確認されたと、情報ポータルサイト「栄養素カレッジ(※3)」が紹介しています。
「イギリスで2019年、体外受精や顕微授精など生殖補助医療(ART ※4)の治療結果とビタミンDとの関連を調査した論文が発表されました(※5)。この論文では、対外受精を受けた女性500名の血中ビタミンD濃度を調べたところ、欠乏群は53.2%、不足群は30.8%と全体の84%にも上り、ビタミンDが充足状態にある群はわずか16%と少ない状況であることがわかりました。ビタミンDの背景に相関して、出生率を比較してみると、ビタミンD欠乏群、不足群、および充足群ではそれぞれ23.2%、27.0%、および37.7%という結果に。着床率や妊娠率に関しても同様に、ビタミンD充足群がそれぞれ最も高い成績(48.1%、41.6%)を示し、欠乏群の成績を15ポイント以上も上回るなど、3グループ間で統計的に有意な差が検出されました。」
(※3)一部抜粋:情報ポータルサイト「栄養素カレッジ」
https://www.otsuka.co.jp/college/laboratory/05.html
(※4)「生殖補助医療:ART(Assisted Reproductive Technology)」は、卵子を採取する「採卵」、体外での卵子と精子の「体外受精」や「顕微授精」、受精卵を子宮内に移植する胚移植などを含む医療技術の総称
(※5)Justin Chu Reprod Health.2019; 16: 106.
https://reproductive-health-journal.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12978-019-0769-7
(図1)ビタミンDと生殖補助医療(ART)の結果
出典:Vitamin D and assisted reproductive treatment outcome: a prospective cohort study.
図1を見ると一目瞭然。ビタミンDが充足状態にあると、着床率や妊娠率がアップするだけでなく、流産率も低いことがわかります。
8割がビタミンD不足。妊娠のための体づくりは毎日の食事から
妊娠率アップや流産率ダウンに関連していることが明らかになったビタミンDは、妊娠中の母親にもとても重要な栄養素といわれています。乳児の体内ビタミンD量は、母親のビタミン量によって決まるとされ、妊娠中期は新生児の成長に関係するため、不足しないように特に注意が必要と考えられています。「栄養素カレッジ」を監修する東京大学医学部産婦人科の大須賀穣教授は、「赤ちゃんのためにも妊娠中は積極的にビタミンDを摂取すること。つわりなどで食事から摂取が困難な場合は、サプリメントを活用してみてください」とコメントしています。
妊活サポート、健康維持・増進のために必要な栄養素
妊娠率アップ、免疫力アップ、感染症対策など健康維持に欠かせない栄養素のビタミンD。その重要性は明らかにされていますが、驚くべきことに約8割の日本人は、慢性的なビタミンD不足状態にあるといわれています。
ビタミンDは、太陽の光を浴びることで生成されることが知られていますが、天候に左右されたり、コロナ禍で外出を控えがちな今は、なかなか難しいですね。そこで、目を向けていただきたいのは食生活です。ビタミンDを多く含むまぐろや鮭などの魚類、舞茸などのきのこ類、卵黄などを積極的に摂取するように心がけてください。ビタミンDは熱に強いという特徴があるため、炒め物や揚げ物など油を使う料理との相性も良くおすすめです。
不妊には、さまざまな理由や原因が考えられ、何かひとつを解決・解消すれば、すぐに子どもを授かれるというわけでもありません。でも今できることとして、健康に何らかの不安がある方、将来子どもを望む方は、まず自分のからだに目を向けてみてください。今のからだの状態を知り、食事をはじめ生活習慣を見直すことは、妊娠を望む方だけでなく、健康的な毎日を過ごすためには、とても大切なことです。
※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。