【医師に相談】誘発性膣前庭炎(誘発性膣前庭痛)とはどのような病気ですか?
Q:誘発性膣前庭痛はどのように診断しますか?
問診と陰部の診察をします。
問診では、症状の部位、病歴、手術歴などについて質問します。
内診では性器や膣を目視して、感染等の徴候がないかを調べます。また、膣から細胞を採取して感染症(カンジダ症や細菌性腟症など)の検査をすることがあります。
誘発性膣前庭炎では、慎重に膣粘膜を目視すると、わずかに粘膜が発赤している(赤みを帯びている)ことが多いです。また、湿らせた綿棒などで軽く膣前庭を刺激すると痛みが生じることも診断の参考になります。この際に、膣前庭ではないところ(大陰唇など)を刺激しても痛みは生じないが、膣前庭では痛みが生じるということが特徴です。
Q:誘発性膣前庭痛に効果的なセルフケアや普段の生活で気を付けることはありますか。
誘発性膣前庭炎は、軽い刺激でも痛みを感じることで、過敏な状態が維持されてしまうという悪循環があります。このため、日常生活で膣への刺激になることを避けることが重要です。きついジーンズやパンティライナーなどの締め付けが大きい衣服はさけましょう。自転車や乗馬などによる圧迫も同様に避けてください。
入浴の際に熱いお湯につかることも刺激になるので避けたほうがいいです。石鹸など、物理的な刺激になるものは避けましょう。また、患部を冷やすことや保湿をすることは効果的とされます。性行為をする際は、行為の前に局所麻酔の成分を含むクリームや軟膏を塗ることも良いです。
また、骨盤底の筋肉をリラックスさせるために、下記のようなストレッチも効果的です。
■骨盤底筋群の柔軟性
骨盤底筋群の柔軟性を保つためには、骨を介して影響しあっている股関節周囲やお尻、お腹の筋肉の柔軟性を保つことが必要です。
骨盤底筋群を直接的にストレッチすることは難しいですが、股関節周囲やお尻、お腹の筋肉のストレッチをすることで、骨盤底筋群の柔軟性を保つことができます。
■鼡径部マッサージ
鼡径部(座った時に曲がるところ、赤丸の部分)のマッサージをします。
指の腹(青丸の部分)を鼡径部に当て皮膚を動かすように優しく円を描くように30秒程度マッサージをします。
骨盤底筋群につながる股関節の周りの筋肉をほぐすことで骨盤底筋群の柔軟性も向上する効果があります。
■骨盤底筋群・お尻のストレッチ
仰向けに寝て、両脚を曲げ膝を抱えます。
足の裏を天井に向けるように膝から先を上げます。
この時、両膝の間をこぶし1個分開けるようにしてください。
足の裏を内側から手でつかみます(赤丸)。この姿勢のまま、深呼吸を10回行います。お尻のあたりの筋肉(青丸)がじわーっと伸びてくる感じになります。
足の裏を手でつかむことが難しい場合は、太ももの裏を抱えるようにしてください。
Q:誘発性膣前庭炎にはどのような治療方法がありますか?
誘発性膣前庭炎は一つの治療だけで解決するものではなく、いくつかの治療を組み合わせて改善を図ります。また、前述したセルフケアを行なうことも重要です。
症状を和らげるために、局所麻酔のクリームを膣口に塗ることがあります。また、エストロゲンの内服も効果的とされています。
飲み薬では、神経因性疼痛の治療薬とされるリリカや抗うつ薬などが処方されることもあります。抗うつ薬は、セロトニンという物質の濃度を脳内で高めることで、痛みの信号が脊髄から脳に上がっていくのを弱める働きがあります。
また、骨盤底の筋肉に過緊張が生じている場合は、筋肉の緊張を緩めるための理学療法を行なうことがあります。
膣前庭を手術で切除する方法も報告されています。
この手術は90%以上と高い成功率が報告されており、また日常生活にもすぐに戻れるとされますが、痛みがぶり返してしまうことも報告されており、慎重な判断が必要です。
Q:誘発性膣前庭痛で痛みが半年以上治りません。手術が必要でしょうか?切らずに改善する方法はありますか?
誘発性膣前庭炎の原因の部分でも記載しましたが、この病気では、膣の痛みが出る部位に血管の拡張が起きた結果神経が過敏になり、痛みが生じていると考えられています。
この異常に拡張した血管を正常にすることで、痛みが改善することがわかっており、カテーテル治療という30分ほどで終わる日帰り治療で改善が得られる方がたくさんいます。
<参照>
(※1)Bornstein B, Preti M, Simon JA, et al. Descriptors of Vulvodynia: A Multisocietal Definition Consensus (International Society for the Study of Vulvovaginal Disease, the International Society for the Study of Women Sexual Health, and the International Pelvic Pain Society). J Low Genit Tract Dis 23 : 161-163, 2019.
[文:オクノクリニック | モヤモヤ血管による慢性痛治療]
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