繰り返す肉離れ(反復性肉離れ)という症状を知っていますか?

タグ: , 2024/9/6

Q:反復性肉離れは、なぜ同じ場所が繰り返し発症するようになるのでしょうか?

肉離れは筋の損傷ですが、十分に時間をかけずに不完全な修復状態で運動復帰し、治りきっていない損傷部位に再び力が加わることで発症することが多いです。また一部では過去の肉離れによって瘢痕組織(傷を治そうとしてできる脆弱な組織部分)が生じてしまい、十分に時間をあけてから復帰にしたにもかかわらず、その瘢痕組織から出血を繰り返すことで再発を繰り返す選手もいます。

Q:肉離れになりました。どうやって適切に復帰の時期を判断しますか?

前述したように、肉離れはMRIによる重症度の分類があります。Ⅰ型からⅢ型まであります。

Ⅰ型 出血のみ
Ⅱ型 腱膜損傷型
Ⅲ型 筋腱付着部損傷型(手術が必要)

Ⅰ型は1~2週間ほどでスポーツが可能になりますが、Ⅱ型では復帰に1~3か月(平均6週間)を要します。
特にⅡ型の場合は、リハビリ後に再度MRIを撮影して、損傷部位が修復されていることを確認してから復帰することが重要です。また損傷した部位を伸ばしてみて、ストレッチ痛がなくなることも復帰の目安になります。ストレッチ痛の消失と損傷部位の修復が確認できれば、スポーツ復帰にむけた運動再開をすすめるリハビリを積極的に開始できます。





Q:肉離れの重症度があるのを知りましたが自分で判断する方法はありますか?

受傷直後に肉離れの重症度ではMRIが決め手になりますが、検査をせずにある程度判断をするには受傷直後におけるストレッチ痛の有無が決め手となります。

太ももの裏やふくらはぎなどの損傷部位をストレッチした時に、明らかなストレッチ痛があればⅡ型以上が疑われます。しかし自己判断だけで決めつけずに病院を受診してMRIを撮影し、正確に診断することが最も重要です。

Q:肉離れをしたときの応急処置はどうしたらいいですか?

Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の4つの処置=RICE処置(ライス処置)を行います。患部を安静に保つためになるべく体重をかけないようにすることが望ましいです。必要に応じて松葉杖を数日間使うことも検討したほうがいいです。

Q:肉離れに対するリハビリは何をしますか?

肉離れの部位に同じように過度な負担がかからないように、リハビリにおいては、身体の使い方を改善させることが重要です。たとえばダッシュをしていて肉離れを起こしたのであれば、正しく走る動作の獲得が重要になります。

また、肉離れを発症してからすぐ(初期)のリハビリテーションでは、低い負荷で筋量を増やすことが重要になります。なかでもスロートレーニングに代表されるような低負荷で、比較的長い時間筋収縮を持続させる刺激が望ましいとされます。

さらにリハビリで適切な体幹機能を獲得することも重要です。例えば骨盤が前に傾いた状態だと、太ももの後ろ側(ハムストリングス)が常に引っ張られ緊張している状態になります。このような場合は、損傷した部位だけでなく骨盤の適切な位置(アライメントと呼ぶ)を獲得することがリハビリの重要な目的となります。

Q:肉離れをふせぐストレッチはありますか?

セルフストレッチには、静的ストレッチと動的ストレッチの大きく分けて2種類のストレッチがあります。
静的ストレッチは反動をつけずに行うストレッチで運動後に筋肉を休ませる目的で使用することが多いです。
動的ストレッチは軽く関節を動かしながら行うストレッチで運動前に準備運動として使用することが多いです。

運動の前に動的ストレッチで筋肉の温度を上げること、筋肉の柔らかさを出してしなやかな動きができるようになることが肉離れを予防することにつながります。

ここでは、肉離れを生じやすい大腿後面(太ももの後ろ)と下腿後面(ふくらはぎ)のストレッチを紹介します。

■大腿後面のストレッチ(繰り返す肉離れに対するストレッチ)

運動前のストレッチ
1.足首を手で掴み、しゃがみます。
2.足首を掴んだまま、お腹と太ももが離れないよう(青の○印)に膝を伸ばし、お尻を高く上げます。そうすると、太ももの後ろ側(赤の○印)が伸びます。
「1」と「2」を10回ほどゆっくり繰り返します。

運動後のストレッチは、「2」の状態で15秒保持します。

■下腿後面のストレッチ(繰り返す肉離れに対するストレッチ)

運動前のストレッチ
1.伸ばしたい側の脚を後ろに引きます。
2.かかとを地面につける(青の矢印)とふくらはぎ(赤の○印)の部分が伸びます。
「1」と「2」を10回ほどゆっくり繰り返します。

運動後のストレッチは「2」の状態で15秒保持します。

Q:繰り返している反復性肉離れを完治させる治療はありますか?

肉離れは一度癖になってしまうと、どんなにケアをしても同じ部位を繰り返し痛めてしまうことがあります。
このような場合は、軽い負担でも肉離れが生じてしまうことから、練習の継続困難、試合参加への妨げになり、選手にとって競技や練習時間の長期損失になることも少なくありません。

実は繰り返して起きる反復性肉離れの患部には、正常では見られないような異常な血管ができていて、異常な血管の構造がもろくて出血しやすいために、そこから簡単に出血して肉離れを繰り返してしまうことが知られています。

最近になってこのようなメカニズムで生じる「癖になった肉離れ」の再発を止めて、完治するための新しい治療が開発されています。出血しやすくなっている異常な血管を標的とした新しい治療です。

Q:肉離れ、筋肉痛、こむら返りはどう違いますか?

肉離れ、筋肉痛、こむら返りは、いずれも筋肉に関連する症状ですが、それぞれ原因や状態、対処法が異なります。

肉離れは筋肉に急激な伸縮や強い負荷がかかることで、筋肉の一部が出血、損傷した状態です。スポーツや重い物を持ち上げる際に発生しやすいです。急激な鋭い痛み、患部の腫れや内出血などの症状が特徴的で直後には安静、アイシング、圧迫、挙上(RICE処置)が大切です。

筋肉痛は通常、普段よりも激しく筋肉を酷使することで発症します。主に運動翌日に発生する筋肉の鈍い痛みや違和感、軽い腫れなどが特徴です。安静や軽度のストレッチやマッサージで経過を見ることで自然と治ります。

こむら返りは筋肉の不随意な収縮(力を入れようとしていないのに勝手に収縮してしまう)のことです。脱水、ミネラル不足(特にカリウム、マグネシウム、カルシウム)、長時間の運動、冷えなどが原因です。予防には、適切な水分補給と栄養摂取、ストレッチが有効です。

Q:肉離れに効くテーピング方法はありますか?

肉離れが特に多い下腿三頭筋(ふくらはぎ)とハムストリングス(太ももの裏)のテーピングを紹介します。

■下腿三頭筋のテーピング

・伸縮性のあるテーピングを使用します。
・かかと〜膝の裏までの長さのテーピングを2本、ふくらはぎの幅の長さのテーピングを3本用意します。
・長い方のテーピングの端を足の裏のかかと部分に貼ります(青の○印)。
・膝の内側に向かって、ふくらはぎの内側面を通るようにテーピングを貼ります(青の矢印)。
・赤の✖️印が痛みのある部位です。

・同じように足の裏のかかと部分に長い方のテーピングの端を貼ります(青の○印)。
・膝の外側に向かって、ふくらはぎ外側面を通るようにテーピングを貼ります(青の矢印)。
・赤の✖️印が痛みのある部位です。

・短い方のテーピングを痛みのある部位(赤い✖️印)に重なるように貼ります。
・先に貼った2本のテーピングに重なるように貼ります。
・1周巻くのではなく、後面のみに貼ります。
・テーピングの幅の半分ほどが重なるように貼ります。痛みの程度によって本数を増減してください(例:痛みが弱い時は2本、強い時は4本など)。

■ハムストリングスのテーピング

・伸縮性のあるテーピングを使用します。
・膝の裏〜お尻と太ももの境目までのテーピングを2本、太ももの幅の長さのテーピングを4本用意します。
・前屈した立位でテーピングを貼ります。

・短い方のテーピングを痛みのある部位(赤い✖️印)に重なるように写真のように少し斜めに貼ります。
・痛みのある部位を中心に✖️を作るように2枚目のテーピングを貼ります。

・テーピングの幅の半分ほどが重なるように貼ります。

・膝の内側から坐骨(青い○印)に向かってテーピングを貼ります。
・先に貼った短い方のテーピングの端に重なるように貼ります。

・膝の外側から坐骨(青い○印)に向かってテーピングを貼ります。
・先に貼った短い方のテーピングの端に重なるように貼ります。

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