【スポーツメンタル】苦境にいる人を見て疲れるのは脳神経が原因?思いやりのメカニズム
思いやりの生じやすさには個人差が存在する
思いやりによる同情は時に共感疲労を生じてしまうこともある行動です。自分の不利益を顧みず他人のために行動する利他的な行動に対して懐疑的な目を向けられることもあるのではないでしょうか。
実は、近年の研究では思いやりの生じやすさには個人差が存在することがわかってきています。ここではそんな思いやりに個人差が生まれるメカニズムを解説します。
思いやりは、ある神経領域のたんぱく質量に比例する
Neural correlates of compassion – An integrative systematic review(Novak et al.2022)では1985年から2020年までの思いやりとMRI画像における脳の活性化の状態を紐づけた論文のメタ分析を行いました。
特に、脳の構造や機能と思いやりの状態の関係を研究した35本の論文について体系的なレビューを行っています。
この結果、左下前頭回の眼窩部分、右小脳、両側中側頭回、両側島および右尾状核において思いやりと頻繁に相互作用を及ぼしている神経領域が存在していることがわかりました。
また、思いやりの低い人はこれらの領域における神経活動が低いかたんぱく質の量が少ないということがわかりました。
これらの思いやりの活性に及ぼす因子は意思によって変化させることができるものではありません。
そのため、思いやりの生じやすさとは、工夫や意思で変わるものではなく、その人が元からもつ才能、天性の性格と考えることができるでしょう。
共感疲労や感情疲労の原因となる思いやりの生じやすさには個人差がある、疲れることは自然なこと
人によっては思いやりで行動を起こすことに対して理解を得にくいことがあるかもしれません。
ただし、個々人で思いやりに差があることは当然のことです。また、同様に思いやりによって行動する人の割合も異なることから、共感疲労など精神面での疲れやすさに差が出ることも自然なことであると考えることもできるでしょう。
自分が助けてあげるつもりで悩みを聞いていたはずが、自分も疲れてしまったからといって思い詰める必要はありません。むしろ、それだけ相手の目線に立って親身に考えることができているという証拠でしょう。
周囲のメンタル面を気にかける際は、自分に精神的な余裕のある範囲で行うようにすると良いでしょう。
[文:スポーツメンタルコーチ鈴木颯人のメンタルコラム]
※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。
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一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会
代表理事 鈴木颯人
1983年、イギリス生まれの東京育ち。7歳から野球を始め、高校は強豪校にスポーツ推薦で入学するも、結果を出せず挫折。大学卒業後の社会人生活では、多忙から心と体のバランスを崩し、休職を経験。
こうした生い立ちをもとに、脳と心の仕組みを学び、勝負所で力を発揮させるメソッド、スポーツメンタルコーチングを提唱。
プロアマ・有名無名を問わず、多くの競技のスポーツ選手のパフォーマンスを劇的にアップさせている。世界チャンピオン9名、全日本チャンピオン13名、ドラフト指名4名など実績多数。
アスリート以外にも、スポーツをがんばる子どもを持つ親御さんや指導者、先生を対象にした『1人で頑張る方を支えるオンラインコミュニティ・Space』を主催、運営。
『弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉』『モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術』など著書8冊累計10万部。