アスリートの不安・緊張対策に有効な「認知的再評価」リアプレイザルとは?
ハーバード・ビジネス・スクールの研究結果
まず、被験者たちに緊張している時、どのように対処するのが良いかを答えてもらいます。被験者たちのほとんどは、一般的に使われている方法と同様に、「自分を落ち着かせることが有効だ」と答えました。
つまり、被験者たちは、「緊張によって起こる気分の高ぶりや身体反応は、深呼吸などで落ち着かせ、取り除くべきだ。」と考えていたことになります。
その後、実際に被験者にはオーディエンスの前でスピーチをしてもらいますが、その際に緊張対策として、2つのグループで別々に行動を取ってもらいます。
1、リラックスのため「落ち着け」と自分に言い聞かせる。
2、不安な気持ちを受け入れ「ワクワクしている」と認知的再評価を行う。
この実験の結果、2の認知的再評価を行ったグループは、主観的な自信の度合いが上昇し、1のグループより、スピーチをより長く行う傾向にありました。さらに、スピーチを聞いていたオーディエンスからの評価も認知的再評価を行ったグループの方が高く、より有能に見え、説得力が高いという印象を与える事に成功しました。
緊張や不安は悪い事ではない
要するに、大事な試合前や本番前に、緊張や不安は悪いもので、取り除くべきと考えるより、ワクワクするポジティブなものと認識を変え、認知的再評価を行う方が、主観的なメンタルの状態が変化し、実際のパフォーマンスの向上にも繋がりやすいようです。
心拍数の上昇など、緊張時に現れる自然反応は、身体が興奮し、ワクワクしている状態でも現れる反応です。そのため、ネガティブで受け身な解釈から、ポジティブで自発的な捉え方に変えてみるだけで、脳の働きは変化します。
緊張や不安は、自然な現象です。取り除くべき悪い事ではなく、最大のパフォーマンスを発揮するための身体からのサインと捉えてみましょう。
参照文献・https://www.apa.org/pubs/journals/releases/xge-a0035325.pdf
[文:スポーツメンタルコーチ鈴木颯人のメンタルコラム(https://re-departure.com/index.aspx)]
※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。
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一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会
代表理事 鈴木颯人
1983年、イギリス生まれの東京育ち。7歳から野球を始め、高校は強豪校にスポーツ推薦で入学するも、結果を出せず挫折。大学卒業後の社会人生活では、多忙から心と体のバランスを崩し、休職を経験。
こうした生い立ちをもとに、脳と心の仕組みを学び、勝負所で力を発揮させるメソッド、スポーツメンタルコーチングを提唱。
プロアマ・有名無名を問わず、多くの競技のスポーツ選手のパフォーマンスを劇的にアップさせている。世界チャンピオン9名、全日本チャンピオン13名、ドラフト指名4名など実績多数。
アスリート以外にも、スポーツをがんばる子どもを持つ親御さんや指導者、先生を対象にした『1人で頑張る方を支えるオンラインコミュニティ・Space』を主催、運営。
『弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉』『モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術』など著書8冊累計10万部。