星稜にとっての「甲子園の魔物」
今では禁止されているサイン盗みも、昔は常とう手段とされていた。語り草となっている98年夏、PL学園の三塁コーチだった平石洋介(現楽天監督)は、ストレートと変化球では捕手の構え方が違うと見抜き「狙え、狙え」「打て、打て」とかけ声を変えて打者に球種を伝達。横浜松坂大輔(現中日)が急に打たれたため、原因に気付いた横浜ベンチはストレートの時も変化球の時も構えを変えないよう捕手に指示し、修正して裏をかいた。サイン盗みは戦術で、その上で高度な読み合いが展開された。
くしくもその98年に大会規則が変更され、走者やコーチャーが捕手のサインを見て打者にコースや球種を伝える行為を禁止し、疑いがある場合は審判員が当該選手と攻撃側ベンチに注意し、やめさせることになっている。罰則規定はない。この問題が根深いのは、サイン盗みをしているかは当該チームにしかわからず、確証を得るのは難しいこと。本人が良心の呵責(かしゃく)に耐えられず『自白』でもしない限り、バレることはない。
星稜・松井秀喜(元巨人)を5敬遠したことで知られる明徳義塾の馬淵史郎監督は、今回のサイン伝達問題についてコメントした。「うちはするな、と言っているが、やったところで逆に利用されるよ。うちは盗まれないように、複雑なサインにしている。やってくるもんだと思って対策している」と、ルールに反して伝達行為が行われている可能性を否定しなかった。「他のチームもやっているのだから、やらないと損」「バレないようにうまくやる」ことを優先する指導者も存在する。まじめにやっているほうがバカを見る。林監督はその流れを変えたかったのだろう。
伝説の名勝負といわれる簑島との延長18回の死闘、松井の5敬遠、今回と星稜はいずれも敗戦。星稜にとって「甲子園の魔物」が立ちはだかった。
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[文/構成:ココカラネクスト編集部]