中村紀洋 高校野球は施設が整っていなくても強くなれる

タグ: , 2018/8/3

 浜松開誠館の非常勤コーチになって1年3か月が経ちました。高校野球に接して勉強させて頂く中で、野球専用グラウンドや立派なウエートトレーニング場が設置されている高校に巡り合います。凄いなあと思うと同時に、もし自分が高校生だったら豪華な施設で「ある部分」の感性が研ぎ澄まされているかなと感じる部分があります。

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  僕は大阪の公立校・渋谷高校で3年間過ごしました。当時全国の強豪だった同じ大阪のPL学園や上宮とは野球をする環境が違います。野球部専用のグラウンドはなく、サッカー部、陸上部、ラグビー部と同じグラウンドで練習していました。野球部でグラウンドを独占して使えるのは週に1回だけ。あとの日は他の部活とグラウンドを共有するため使えるスペースが限られてフリー打撃はできませんでした。

 できる練習はキャッチボール、内野ノック、ティー打撃、走り込みぐらいです。限られたスペースで強豪校に勝つためには漠然と練習しても追いつきません。冒頭で「ある部分」の感性と言及しましたが、僕がこの環境で大事にしたことが「創意工夫」でした。ティー打撃、素振りでも1球1球を大事にして振り込む。

 当時テレビの野球中継を観てお手本にしていたのが南海の門田博光さんでした。決して体は大きくありませんが、目一杯振る豪快な打法で本塁打を量産していました。門田さんの打撃フォームは何十回、何百回も見て研究しました。素振りの時も門田さんを意識して思いっきり腰をねじって振りました。体全身を使って素振りした後に立てないほど力を振り絞ると、「振る力」が身につきます。これを毎日休まず30回。たった30回と思われるかもしれませんが、漫然と1000回素振りするよりも疲弊します。毎日目一杯、最低30回振った日々が打撃の下地になったと思います。また、走ることはどんな環境でもできます。走った量は嘘をつきません。走りこんだ量が多い選手は下半身ががっちりして粘りがありますし、投手は球速が上がり打者も飛距離が伸びます。僕も走り込みは積極的に取り組んでいました。

 中学、高校、大学とそれぞれ野球の施設が整っていない環境でプレーしている方もいると思いますが、創意工夫次第で野球はうまくなります。実際に野球の施設が整っていない無名校を出てプロで大活躍した選手はたくさんいます。今はYouTubeなど動画でも野球の知識も得られます。僕がYouTubeで野球の技術をアドバイスする動画を配信しているのも、1人でも多くの選手たちにうまくなってほしいという思いからです。野球だけではありません。与えられた環境で創意工夫して結果を出すことは人生にも大いに役立つと思います。

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部 平尾類]

中村 紀洋(なかむら・のりひろ)

渋谷高で2年夏の90年に「4番・投手」で激戦区の大阪府予選を勝ち抜き、同校初の甲子園出場に導く。高校通算35本塁打。91年にドラフト4位で近鉄バファローズに入団し、「いてまえ打線」の4番として活躍した。00年に39本塁打、110打点で本塁打王、打点王を獲得。01年も132打点で2年連続打点王に輝き、チームを12年ぶりのリーグ優勝に導く。04年に日本代表でシドニー五輪に出場して銅メダルを獲得。メジャーリーグ挑戦を経て06年に日本球界復帰し、07年に中日で日本シリーズMVPを受賞した。13年にDeNAで通算2000安打を達成。15年に一般社団法人「N’s method」を設立し、独自のMethodで子ども達への野球指導、他種目アスリートを中心にトレーニング指導を行なっている。17年には静岡・浜松開誠館高校で硬式野球部の非常勤コーチに就任。高校生の指導に力を注ぐ。

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