F2選手権で死亡事故、「セナ死亡事故の教訓」と近代F1での新たな課題とは?
アイルトン・セナの死亡事故以降…
1994年のアイルトン・セナの死亡事故以降、あらゆる安全対策が講じられてきた。サバイバルセルと呼ばれる運転席部分は国際自動車連盟による厳格な衝撃安全試験に合格しなければならない。選手の首を守るために、首周りに装着するHANSデバイスも義務付けられている。昨季からは運転席を草履の鼻緒のような形の構造部で覆うハロ(ヘイロー)も技術規則の変更で車体に取り付けなければならなくなった。
これだけ万全な安全装備があるにもかかわらず、惨劇が起きてしまった。これについて、元F1王者のジャック・ビルヌーブ氏がベルギーの地元テレビ局「RTBF」の取材で2つの問題を指摘している。
「近代F1で自分が嫌っていることだが、1つ目はシミュレーター(疑似運転体験装置)に頼っていることだ」と言う。
車両開発の予算削減のため、サーキットを使った実走テストの機会が減り、その分を各チームとも本番と同じ走行条件を再現できるシミュレーターに依存するようになった。その装置を毎週のようにF1チームのファクトリーで試すのはルノーと育成契約を結ぶユベール選手のようなF1ドライバーの卵たち。「シミュレーターと同じ感覚でコースを走るから、緊張感もなければ、アドレナリンも出ない。危険に関する体勢感覚がなくなっているのだ」と指摘した。
もう1つはコースの安全性に関する盲点だ。近年に建設されたサーキットではランオフエリアをグラベルや砂ではなく、アスファルト舗装するところが多い。ブレーキによる減速が可能で、コースへの復帰もしやすいメリットがあるからだ。
実は事故が起きた付近はランオフエリアが舗装されていた。ユベール選手の事故の場合は、クラッシュ相手となったコレアが直前に起きたスピンを避け、ランオフエリアを猛スピードで駆け抜けた結果、出合い頭の大事故となった疑いが強まっている。
ビルヌーブ氏も「(コース外の)アスファルト上で起きた事故の場合は選手へのリスクが高まる。グラベルや砂地のようにすぐにクルマがストップできないから。安全に対する誤った意識を生み出している」と嘆いた。
マシンのスピードが高まれば、今回の事故のように安全問題に発展するし、スピードを落とすような規定をつくれば、エンターテインメント性を損ないかねない。モータースポーツは因果な競技だとつくづく痛感する。
[文/東京中日スポーツ・鶴田真也]
トーチュウF1エクスプレス(http://f1express.cnc.ne.jp/)
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