「●●世代」がどんなに活躍しても「松坂世代」を超えられない理由
「松坂世代」の総大将、西武松坂大輔投手(41)がついにユニホームを脱いだ。横浜高校3年時に甲子園春夏連覇。プロでは日米通算170勝。晩年はケガに苦しんだが、高校時代からスター街道を走り続けた、オンリーワンの選手だった。
プロ野球界「●●世代」のさきがけでもある。同じ学年に活躍した選手が多い世代は、かつて「昭和40年会(古田敦也ら)」「昭和48年会(イチローら)」などと呼ばれた。松坂が違うのは、高校から世代の先頭を走り続けたことだ。高卒1年目から3年連続最多勝でファンを驚かせ、それに続くように藤川球児、杉内俊哉、村田修一、和田毅らが台頭し「松坂世代」と呼ばれるようになった。
「●●世代」は後にも続いた。甲子園で優勝投手となった早実・斎藤佑樹がマウンドでハンカチタオルを使ったことに由来する「ハンカチ世代」、甲子園春夏連覇を果たした大阪桐蔭の絶対的エース藤浪晋太郎の「藤浪世代」、高校通算111本塁打の新記録を打ち立てた早実・清宮幸太郎の「清宮世代」などが代表的だ。
「●●世代」が生まれる背景には、甲子園のトップスターの存在が欠かせない。高校時代に圧倒的な知名度を得て国民に認知され、期待度がとくに大きいドラフト1位選手がネーミングされてきた。プロの活躍度合いでは「松坂世代」を上回る年があるにもかかわらず、他の世代の名は世間にそれほど浸透していない。なぜか。名付けられた世代の象徴である「甲子園のスター」が、「プロ野球のスター」になれずに苦しんでいるからだ。
「ハンカチ世代」でいえば、田中将大、坂本勇人らがスーパースターとなり、プロ15勝で現役引退した斎藤と立場が逆転。かといって「マー君・坂本世代」とはならない。藤浪が期待通りの結果を出せない「藤浪世代」は、ライバルだった大谷翔平が投打二刀流で世界的プレーヤーに。「清宮世代」では、伸び悩む清宮を尻目に、村上宗隆が大ブレークした。主役が堂々と主役を張っていなければ、世代の名はすたれてしまう。