【アジア杯総括】悪夢の後半に何が起きたのか 惨敗のイラン戦で浮き彫りになった森保采配の限界
この交代策はラウンド16のバーレーン戦と、人もポジションも時間帯も全く同じ。つまり、予定された交代だろう。しかし、バーレーン戦のようにはいかなかった。イランは三笘に早いマンマークを付けてスペースを与えず、2人で寄せてスピードに乗らせない。南野も、自陣に押し込まれた展開で輝きを放つタイプではなかった。
そして、次の交代カードは後半アディショナルタイムまで進み、1-2と逆転を許したゴールの後になる。森保監督はこの間、約30分動かなかった。
板倉に代えて谷口彰悟か。あるいは板倉を外せないなら、町田浩樹を入れて3バックへ移行し、ロングボールへ対処する枚数を確保するか。もしくは中山雄太を左サイドに入れて伊藤洋輝を3バックへ移し、孤立していた三笘のサポート役に中山を付けるか。さらに前線も交代し、ロングボールの出処へのプレッシャーを強める手もあった。
これらは筆者の妄想ではない。すべて、このアジアカップで実際に日本が見せた引き出しばかりだ。森保監督やチームスタッフの中に、アイデアはあったはず。だが、動かなかった。認知、判断、決断のフェーズで言えば、今回焦点が当たるのは、決断のところだ。
その時点で2人しか交代していなかったので、普段の試合なら、すでに何枚か交代カードを切っていた。違いは延長戦の有無なので、今回は延長を意識したのは間違いない。延長に入れば、その時点で大きく動いたかもしれないが、後半の残りは耐え忍ぶこと、動かないことを、森保監督は選んだ。
非常に”らしい”采配ではある。カタールW杯ではドイツに前半から守備をズタズタに切り裂かれながらも、1失点で耐え、ハーフタイムに3バックと一気呵成のハイプレスへ激変させたことで、面食らったドイツに修正や準備の時間を与えず、逆転に成功した。粘って、耐えて、ギリギリまで動かない森保監督の手法が「名采配」と称えられた試合だ。
今回はその采配に批判が集中したが、根本的に言えば、森保監督自身は何も変わっていない。基本的に後手打ちの人だ。それがはまったのがカタールW杯で、裏目に出たのがイラン戦だっただけ。