会見中は悪ぶるも井上尚弥とはペコリ “悪童”ネリは厳戒態勢で心身ともに盤石だ「死を覚悟して挑む」
ただ、井上との2ショットを撮った直後には、会見中に一度も外さなかったサングラスを取り、王者にペコリ。ガッチリと握手を交わした。その振る舞いは、母国メディアなどで「イノウエは過大評価されている」と挑発的な言動を繰り返してきた悪童のそれではないように見えた。
「この試合が決まってからとても充実した日々を送っている。完全にメンタルはできている。練習も完璧にやってきた。体重はもうリミット内だ。だから問題ない。練習は成功している。俺はメキシカンボクサーとしての雄姿を見せたい」
そう意気込む姿からも、いかつい装いとは裏腹にした殊勝さは明らかだった。
数々の問題行動から“悪童”と呼ばれるネリ。だが、山中慎介戦以来6年2か月ぶりに挑む日本での試合を前に、「完璧」と豪語する本人のコメントにもあるように状態は万全だ。
実際、事情を知る関係者も驚きの声を上げる。今回の興行に携わる帝拳プロモーションの本田明彦会長は、約5か月間のトレーニングキャンプで搾り上げてきたネリの状態について陣営から毎日報告を受けていると証言。「1か月をかけて減量をしている」とし、水抜きなどの負担の大きい減量もしていないという。
さらに尿検査を基本としているVADAによるドーピング検査も「5、6回」も実施し、すべてをストレートでパス。順調なコンディション調整ぶりからメキシコの関係者たちも「別人になったネリが見られるかもしれない」と驚いているようだ。
井上に対して「死を覚悟して戦いに挑む。勝者になると確信している」とも語ったネリ。過去にないぐらいに最高の仕上げをしてきた29歳のメキシカンは、世界にベストバウトを見せつけられるか。
[文/取材:羽澄凜太郎]
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