ネリが番狂わせを起こすとすれば――東京D決戦で断然優位の井上尚弥に潜む“危険性”を米記者に訊く【現地発】

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井上という強大なライバルに挑むネリ。彼が番狂わせを起こす可能性は現時点では考えにくいが……。(C)Getty Images、(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

「ネリが勝つ」と答えたものは1人もいない

 日本人がメインを飾るボクシング興行としては史上最大級だが、結果予測はかなり一方的なものになっている。バンタム級に続き、スーパーバンタム級でも4冠を制した井上尚弥(大橋)に、元世界2階級制覇王者のルイス・ネリ(メキシコ)が挑む、5月6日の一戦だ。

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 東京ドームという舞台、そしてネリと日本ボクシングの間に深い因縁があることは海外でも知られており、“本場”アメリカでの注目度も高い。それほど話題豊富な一方で、井上が敗れると考える関係者はほとんど存在しない。筆者は3月から複数のメディアにこの試合について尋ねてきたが、「ネリが勝つ」と答えたものは1人もいない。他ならぬ筆者も、もちろん井上が断然優位と考えている。

 ネリの日本における知名度の高さ、この期に及んでもなお挑発的な言葉を繰り返しているという背景もあり、今、井上のモチベーションが最高潮のはず。心身ともにベストのコンディションを作ってくるだろう。だとすれば、今やパウンド・フォー・パウンドでも最高クラスと目されるようになった31歳のモンスターが、29歳のメキシカンに付け入る隙を与えるとは考え難い。

 開始のゴングが鳴らされた直後から高速ジャブといきなりの右で機先を制し、ネリに自由を許さない流れが容易に想像できる。相手が強引に中間距離に入ろうとしたところに、井上の左ボディ一閃。2021年5月のブランドン・フィゲロア(アメリカ)戦でボディに強打を浴びて倒されたネリが、東京ドームでもボディを打たれてのたうちまわることになると筆者は予想している。現在の井上の充実度を考慮しても、このシミュレーションに同意するファン、関係者は少なくないのではないだろうか。

 一定のパワー、スピードを備えたネリは油断できない相手ではある。35勝中27KOとこの階級の選手としてはKO率も高く、バンタム級時代には山中慎介(帝拳)を2度にわたってKOした強打は印象的だった。もちろん禁止薬物使用、体重超過があった試合での攻撃力を鵜呑みにはできないが、過去3戦もすべてKO勝ちとスーパーバンタム級に昇級以降もパワーを保っている。

 そんなネリが大番狂わせを起こす可能性があるとすれば、何が必要なのか。米専門誌『Ring Magazine』のシニアエディターであるジェイク・ドノバン記者はこう語る。

「ネリはフットワークと角度を変えたパンチで相手を打ちのめすバンタム級自体の野獣に戻る必要がある。そのバージョンがまだ存在するのかは定かではないが、イノウエを初めて倒す選手になるにはあの頃のネリに戻らなければいけない。イノウエは格の落ちる選手相手では瞬間的に集中力を途切らす傾向があるだけに、強打を当てることは絶対に不可能ではない。そのためにネリは規律の取れたパフォーマンスを見せなければならない」

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