「別人になるかもしれない」――ネリの減量成功は奇跡とすら 井上尚弥との東京D決戦に挑む悪童に見た“死ぬ覚悟”

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二日酔いに悩まされた山中戦

日本ボクシング史の「汚点」となった山中戦からネリはふたたび声価を高めてきた。(C)Getty Images

 今年1月に母国のポッドキャスト番組『Un Round Mas』に出演した際には、体重管理に関する信じがたい行動を明かす一幕があった。過去の自身を「俺はいつも食生活に問題を抱えていた」と明かした29歳は、体重超過を犯した山中戦の舞台裏も激白していた。

「ヤマナカとの2戦目も日本に向かう15日ぐらい前まで友だちと喋り倒して、気がついたら午前3時、4時という毎日だった。もちろんトレーニングは続けていたけど、始めると二日酔いに悩まされていた」

 波紋を呼んだ山中戦から約3年後に挑んだブランドン・フィゲロア戦でも戦前に偏食癖を改められず、父親から「そんなクソみたいなことはすぐにやめろ」と雷を落とされていたと言うネリ。無論、減量はボクサーの宿命であり、義務。遵守するのは当然であり、山中戦の度重なる規律違反は言語道断だ。それを大前提として、彼の過去を考えると、今回の500グラムアンダーは奇跡とすら思えてくる。合わせてくれて本当に良かったという気持ちも沸く。

 4日の試合前会見でネリは、井上を不必要に煽る素振りも見せず、「KOで倒す」と語るにとどめ、己に矢印を向け続けた。ここでも挑発的な言動を繰り返してきた背景から「拍子抜け」と感じる人はいるかもしれないが、筆者には「死」と語る男の覚悟が、興味深く映った。

 とはいえ、対峙する相手は「史上最高」と評される偉才だ。どれだけ努力を重ねようとも越えられない壁として立ちはだかる可能性は大きい。筆者も心身ともに充実の一途をたどる井上の勝利は揺るぎないと考える。

 だが、ネリ陣営からも「別人になるかもしれない」と太鼓判を押されるネリが、日本ボクシング史を変える至高の舞台で、どう振る舞うのか。下馬評こそ一方的だが、“狂騒曲”の結末は見逃せない。





[文/取材:羽澄凜太郎]

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