元F1ドライバー・山本左近氏が衆院選で初当選「最後尾のスターティンググリッドに並ばさせていただきました」
2019年の参院選に出馬した時の山本左近氏(鶴田真也撮影)
今回の衆院選は逆に追い風が吹いた。自分よりも上の名簿順位30位までの候補者は全て小選挙区との重複だったが、小選挙区で次々と接戦を制し、選挙区で落選した自民党の候補者はわずか8人。比例単独では名簿最上位だった左近氏に最後にお鉢が回ってきた。そのため、当選の報が届いたのは日付が替わった1日未明だった。
出身は愛知県豊橋市で、06年にスーパーアグリからF1にデビュー。07年にスパイカー、10年にHRTに所属し、計21戦に出場した。15年には電動車のフォーミュラEにもスポット参戦。F1を退いて以降は医療法人や社会福祉法人の理事を務め、やがて国会議員を目指すようになった。今回の選挙でも質の高い医療と介護の提供を訴え、世界的なモータースポーツイベント招致などの公約も掲げていた。
「選挙戦を通じて改めて自動車に関わる税制や自動車の未来の在り方など、レーシングドライバーとして育ち、F1の世界で日の丸を背負ってきた山本左近だからこそできることがある」と決意を新たにした。
元F1ドライバーでは7月に死去した通算12勝のカルロス・ロイテマンさんがアルゼンチンで国会議員を務めた例がある。ちなみに自民党の三原じゅん子参議院議員は歌手、俳優の経歴を持つが、フォーミュラ・トヨタや全日本GT選手権(現スーパーGT)などにも参戦した元レーシングドライバー。モータースポーツの世界では左近氏の先輩にあたる。
新型コロナウイルス禍で昨年、今年とF1日本GP、世界ラリー選手権ラリージャパン、鈴鹿8時間耐久ロードレースなど、二輪を含めたモータースポーツの全ての世界選手権イベントが2年連続で中止となった。そこでホストサーキット側も東京五輪でも採用されたバブル方式を用いて、外部との接触を徹底的に防ぐ十分な感染対策を綿密に立てたが、関係者の入国ビザが発給できるかの保証がなく、泣く泣くイベントの開催を断念した経緯がある。
おそらく開催に向けて骨を折った政治家は多いだろうが、最終的には政府の理解を得られなかったと見る向きもある。実際に過去に国会に提出する動きがあった「公道レース法案」もいまだに日の目を見ていない。1年生議員ながらモータースポーツの世界に精通する左近氏の手腕が試されるところだ。
サーキット場から国会議事堂に職場を移した左近氏が身命を賭して国政にまい進する。大いに期待したい。
[文/中日スポーツ・鶴田真也]
トーチュウF1エクスプレス(http://f1express.cnc.ne.jp/)
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