歴史的快挙を成し遂げたラグビー日本代表を支えた「ソフトウェア」の開発秘話とは

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絶対役に立てるという直感的な確信があった

田中:開発を進めていくと、色々な壁に当たったりだとか、求めていた結果ではなかったりなど、様々な苦労があったと思いますが、その辺りはいかがですか?

橋口:2012年の秋に依頼を受け、そこから半年しか時間がなく、2013年4月に開催された日本代表の合宿が最初のターゲットでした。それまでに「ONE TAP SPORTS」を使える状況にしてくれと言われていました。コンセプトはあったものの、その要件定義がまとまっている訳ではなかった。そこで、ストレングス&コンディショニングコーチに、どういうことに困っていてどういう機能があったらいいかというのを聞き、それを僕らがまとめて一つ一つ定義を確認していったのが半年のうちの冒頭3ヶ月でした。その後開発を進め、なんとか合宿の前日くらいに最初のプロダクトが出来上がりましたね。

合宿当日、合宿所へ行き、選手の前で挨拶をしました。我々はこういう者で、こう言ったソフトを開発しました。このソフトをみなさんと一緒に育てていきたい。なので、どんどんフィードバックをくださいと言いました。
ただ、どんどんくださいと言ったものの、想像以上のフィードバックがきましたね。使いにくいだとか、こんなんじゃ無いんだよねとか。細かいところまで含めて山のようにきました。
その後最初の1ヶ月はほとんど毎日フィードバックに対する改善作業を繰り返していた気がします。

田中:商品と呼べるまで、他の選手やチームにお渡しできるまで、相当な苦難や、辿り着けるのかと言った焦燥感はありましたか?

橋口:プロダクトが求められている顧客価値としては、一定の時間をかければそこに辿り着けるだろうという感覚はありました。
ちなみに2チーム目の顧客が慶應大学のラグビー部だったんですが、彼らも代表チームと同じくイノベーターマインドがあり、一緒になって直す、自分たちが作るんだという意気込みで使っていただいていたと思います。

他のチームでもニーズがあるはず、という感覚はありましたので、そこから2〜3年かけてプロダクトに磨きをかけ、広く他のチームへも提供を始めたのは2015年の9月でした。
ただ、プロダクトの価値を生み出せるかという不安はなかったんですが、会社のキャッシュが持つかなという不安は少しありましたね。

田中:なるほど。キャッシュのバジェットはどのように工面されましたか?

橋口:基本はそれまで行っていたコンサルで稼いだお金ですね。そっちで稼いだお金を全部「ONE TAP SPORTS」の開発につぎ込んでいました。
もう、赤字か黒字かという話ではなく、赤字は当たり前で、3年間くらいは稼いだお金を燃やしてプロダクトを良くしていくことに必死でした。

田中:それは橋口代表が考えるスポーツに対するロマンがあったからできたことではないのでしょうか?

橋口:どうなんですかね・・・。あんまりロマンという感覚では無い気はします。ただ、スタートする時に絶対役に立てるという直感的な確信があったのと、沢山フィードバックを貰う中でこちらも向こうも本気で良くしていこうと取り組んでいくと、だんだん同志的結合が生まれてくるんですよね。フィードバックの質と量も変わってくるし、明らかに我々は山を登っている、良い方向に向かっているという感じを持つようにはなりました。そうしているうちに、これは必ず役に立てるものなんだなという確信が生まれてきたというのは大きかったと思います。
2015年W杯に向けて、日本代表が南アフリカに勝つための「ビート・ザ・ボックス」という強化作戦を開始し皆が必死に戦っている中で、我々がその船を降りるという発想は1ミリもなかったですね。一緒に乗り込んでいる以上は共に戦いたいし、そのために貢献できるはずだという感覚はありました。

僕らは「1%に満たないくらいの小さなピース」

田中:2015年から2019年W杯で日本代表が大きく飛躍しました。その中で、そこに対して自分たちが大きく貢献したなという手応えはありましたか?

橋口:正直にいうと、その感覚は我々の中に多少はありますが、一方で全体の中の貢献度を見ると1%に満たないくらいの小さなピースだったんだろうなという思いもあります。選手が死ぬ気で努力した様子をよく間近で見ていましたし、あの努力に対してコーチやスタッフ陣、ドクターたちがどれだけのコミットメントをしていたかも知っていた。その方々の貢献に比べると、本当に小さな小さなピースとして貢献したという感じはあると思います。

田中:ただ、チームや選手、関係者の方からの感謝はありましたよね?

橋口:そうですね。それはたくさんいただきました。やっぱり僕らが1番嬉しいのはそれですよね。勝った時に皆が喜んでいる様子を見て僕らも爆発的な感情を共有することと、終わった後にお疲れ様会をやるんですが、その時に、『本当にあの時あれを作っていただいて助かりました』などと言っていただくと、全ての苦労が吹き飛びます。

田中:W杯といえばラグビー界の中でも大きな大会。その中で日本代表というチームに一緒に加わり、成果をあげないといけないというプレッシャーみたいなものはあったのでしょうか?

橋口:あまりプレッシャーとして認識することはなかったと思います。直感的なものですが、大変だろうけど必ずできるはずだという確信は持っていましたから。
ただ、責任は負っているなと思いました。私自身も日本代表の一ファンでしたし、全国にいるラグビーファンは日本代表の戦いにめちゃくちゃ期待を寄せている。それまで4年に一度勝てずにくやしい思いをしていたので、自分たちがそこに関わることに責任は感じていました。

田中:ちなみに2015年W杯で歴史的な一勝をあげることに貢献したのち、2019年W杯でさらに功績を残すことに貢献するため、具体的に改善したポイント等があれば、可能な範囲で教えてください。

橋口:それでいうと、2015年と2019年で「ONE TAP SPORTS」は全く別物になっていますね。一つ一つどこを改善したかというのはひとことで説明できませんが・・・。トレーニングや練習、試合の強度をモニタリングするというのが、怪我の予防において1番大事なことなんですが、その強度管理を可視化するという方法が、4年前と全然変わりましたね。
それは現場のスタッフから「これをこうしたい」という意見を沢山いただいて、プロダクトに反映していったということなんですが、もう何百カ所ではきかないくらい変わっています。

やはりソフトウェアというのはそうやって育って行くものですし、育てていただいたということだと思います。





※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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