群雄割拠のライト級の新王者決定戦「トップ選手同士の対戦だが、ワンサイドになる可能性も」髙阪剛が『UFC262』の見どころを語る
日本時間の5月16日(日)、アメリカ・テキサス州ヒューストンのトヨタセンターで、『UFC262』が行われる。
メインイベントは、ハビブ・ヌルマゴメドフの引退により空位になったライト王座を懸けて、8連勝中のシャールズ・オリヴェイラと元ベラトールライト級王者マイケル・チャンドラーが対戦する新王者決定戦。
この試合の見どころを、「世界のTK」高阪剛に語ってもらった。
(写真左より) シャールズ・オリヴェイラ、マイケル・チャンドラー/Getty Images
シャールズ・オリヴェイラ/Getty Images
——『UFC262』のメインイベントは、オリヴェイラvsチャンドラーのライト級王座決定戦ですが、奇しくもヌルマゴメドフと対戦してない選手同士の一戦になりましたね。
「それだけライト級の層が厚いということですね。また、その激戦区のライト級で、オリヴェイラは8連勝していて、チャンドラーは10年前からベラトールのタイトル戦線に絡み続けて、UFCでもダン・フッカーに勝利した。タイトルを争うにふさわしい二人だと思います。」
――この一戦のポイントはどの辺になりそうですか?
「二人のこれまでの試合をあらためて見直してみたんですけど、ひとつの大きなテーマとして「出力のコントロール」が挙げられるんじゃないかと思うんですよ。」
――「出力のコントロール」とは、どういうことですか?
「例えばオリヴェイラって、UFCで8連勝していますけど、連勝し始める前はけっこう負けてるんですよね。」
――確かに連勝し始めるちょっと前までは、1階級下のフェザー級でしたが、勝ったり負けたりでした。
「それが勝ち続けるようになったのは、何があったのかと思って当時の各試合をじっくり観てみたんですけど、力の出しどころ、力の使い方が変わったんだなと思ったんですよ。
オリヴェイラは寝技の技術がかなり高いので、やはり試合のなかでサブミッションをかならず極めにいくんですけど、それで極めきれな勝った時、仰向けのガードポジションになることが多々あったんです。要は極めにいったときに力を使いすぎてしまって、そこから逆に防戦一方になって負けたりしていた。」
――極めきれたらいいけど、しのがれたらスタミナが切れて、逆転負けをしていた、と。
「最後に負けたのは、2017年12月のポール・フェルダー戦ですけど、その時も寝技で追い込んで、ダースチョークとか極めかけるんだけど、しのがれてしまって。最終的に仰向けになったところで力が途切れて、エルボーでTKO負けを喫しているんですよね。もっと過去にさかのぼっても、オリヴェイラはそういう負け方が多かったんです。
でも、連勝し始めてからというのは、しっかりこれまでの敗因を分析したんでしょうね。もし寝技をしのがれても、もう一度リカバリーできるだけのフィジカルを残しておくとか、そういったところが修正されていて、結果にもつながっていると思うんですよね。」
――その力の使い方、スタミナの使い方が「出力のコントロール」ということですね。
「そうなんです。それで前々回やったケビン・リーとの一戦は、ものすごくその辺を考えた試合展開だったんですよ。スタンドでも、それまでは組みついていって、テイクダウンをするためにすごく力を使っていたんですけど。ケビン・リー戦では、打撃でつめていって、相手の体勢が崩れたところで、比較的ラクにテイクダウンを取っていた。」
――だからこそ、ケビン・リーというレスリングの強豪選手でも、サブミッションでフィニッシュできた、と。
「そのケビン・リー戦をはじめ、打撃でしっかり勝負することで、フィジカルを使ったテイクダウンに頼らなくてよくなった。また逆に相手がテイクダウンを取り返しにきても、それを封じて相手にフィジカルを使わせることができる。そうやって削っていく方向にシフトしたんじゃないか、という気がします。」
――以前は自分が体力を削られて負けることが多かっただけに、逆に相手を削る術を磨いていったわけですね。
「それは技術であり、試合の組み立て方ですよね。以前は、試合中ずっと70~80%の力を出し続けようとしていたがために失速していたのが、力の出しどころを心得たことで、最後まで力を出せるようなコントロールの仕方も身につけたんじゃないかと。
技術的な部分はもともと高いものを持ってますからね。それより、試合の組み立て方や、力のコントロールに何かを見出したんじゃないかと思う。要は持っている武器を使いこなすのがうまくなったんですよ。もともとすごい武器を持っている選手が、それを使いこなせるようになったら、まさに鬼に金棒ですよね。」