中国の仮想通貨とブロックチェーン

タグ: , , , 2021/3/25

一方、このように中国は仮想通貨の取引を国家レベルで規制しているにも関わらず、仮想通貨の採掘、即ちマイニング行為については禁止していない。

これについては日本でもあまり認知されておらず、中国ではマイニング行為も禁止だと誤解されがちだ。

全世界のマイニングによる採掘量ついては、現在、中国が6割以上のシェアを握っている。

ビットコインのマイニング事業者(以下、マイナー)の過半数が、電力コストの低い中国に多く存在している事実からも、その取引やICOについては規制があるにも関わらず、中国の世界的な仮想通貨市場への影響力は大きい。

なお、香港については、これまで述べてきた中国(本土)とは別に扱われている。

香港証券監察委員会の情報サイトでは、ICO規制および、仮想通貨取引の取引禁止などの通達文は掲載されていない。

中国で2017年9月に通達された、中国における仮想通貨の禁止に関する文書においても、「香港のICO企業は香港政府に申請し、ライセンスの取得をすることが可能である」との通達書が掲載されており、中国(本土)とは区別されている。

そもそも中国が仮想通貨の禁止とした理由は、法律の未整備は表の事情であり、その本質は、中央銀行がコントロール出来ない暗号資産がもたらす金融リスクに対しての懸念によるものとされている。

わかりやすく言えば、マネーロンダリング等による不正資金の流出、流入リスクだ。

ただ、香港は中国における欧米のアイデンティティでもあり、ここでも仮想通貨の取引を禁止することは香港国内外での大きな反発を生み出すことは必須であり、香港のポジションを中国本土である海南島に実質的にシフトさせる中、無理せずに敢えてガス抜きにしている印象さえある。

この香港からの「海南島シフト」については別の機会に詳しくお話ししよう。

なお、筆者の経験上、中国では新たなイノベーション分野に対しては当初は規制を行わず、一定程度自由にしておき、市場における適合性や課題を把握、分析しつつ、ある段階から規制や制度化を行うことが一般的であり、その後、中国固有のものとして模様替えされて展開されることが多い。

中国ではGoogle系のサービスは全てアクセス出来ないし、世界的に有力なSNSもほとんど使用できない。

ただし、単に禁止しているわけではなく、それに置き換わるサービスやSNSは存在し、それも独自に中国国民に対して利便性を高めたものであり、多くの人々に受け入れられている。

その流れの中で、BAT(バット)と呼ばれる、中国の大手IT系企業3社と呼ばれる、Baidu(百度、バイドゥ)、Alibaba(阿里巴巴集団:アリババ)、Tencent(騰訊:テンセント)のような企業が成長してきた。

また、既にその次のグループとしてToutiao(今日頭条:トウティアオ)、Meituan Dianping(美団点評:メイトゥアン・ディエンピン)、DidiChuxing(滴滴出行:ディディ)の呼ばれる急成長中の企業群もある。

その全てが、中国の独自サービス、プラットフォームとして、中国国内では圧倒的なシェアを占めている。

なお、仮想通貨、暗号資産に関してもこの流れに沿って解放されていくと思われるが、一方、その運営に不可欠なブロックチェーン技術については、元々、規制どころか全く逆である。

ブロックチェーンは、その安全性や改ざん防止の観点から、様々な分野に応用可能な技術であり、中国も特定の国にコントロールされている分野にて、主導権を取り戻せるツールとして、当初から現在に至るまで、むしろ重要視されている。

次回、中国におけるブロックチェーンについて述べてみよう。





※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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山本 岳志(やまもと・たけし)

山本 岳志

SRBTechコンサルティング株式会社 取締役副社長 パートナー
一般社団法人亜洲一帯一路国際開発協会 総監

中国ビジネスに2001年から携わり、進出する側の経験も、今ではそれを支援する側の立場としても見識を積む。
新卒としてバンダイグループ企業(株式会社バンプレスト)にて、ゲーム開発の専門職として経験を積み、その後入社したモバイルコンテンツ企業(株式会社インデックス)では、ディレクターから部門長、制作子会社の代表取締役と中国子会社の董事副総理も兼務し、日中でのマネージメントを経験。
その経験を活かしてウェブマーケティング企業(株式会社アイ・エム・ジェイ)へ移り、経営企画職にて中国企業のM&Aに携わり、現在は中国に進出する企業の総合実務支援を行う現職にて、取締役副社長パートナーとして、業界問わずコンサルティングに従事。

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