カーリング界が「テクノロジー」で変わる?女子チーム・フォルティウスを支える「仕掛け人」が描く2026年五輪までの航海図
「感覚の競技」カーリングがデータ化で変わる?
田中:トップスポンサーなので、相当な額だとは思いますが、携帯のリユース事業とフォルティウスがどうリンクするのかなというところは気になっています。
粟津:カーリングは、スポーツの中でもかなりデータ分析が遅れていて、IT化が遅れています。我々はデバイスをたくさん持っているので、将来的にはそのデバイスからの情報やセンサーからの情報を分析して、そこから新たに商品やマーケティングに繋げたいという思いがあります。その中で、スポーツの中でもデータ分析がまだ進んでいないカーリングに着目をしました。1990年代のヤクルト・野村監督のID野球みたいなことを、カーリングでもやりたいなと思ったんです。
田中:IDカーリングですね。ということは、カーリングはあれだけ競技中に間があって作戦を立てられるのに、アナログというか、自分たちの感覚の中でやっているんでしょうか?
粟津:そうなんです。世界における戦いも同様でオリンピックなどを観ていても、選手が腰からストップウォッチをぶら下げていますよね。
田中:ありますね。あれって何に使っているんでしょう?
粟津:ストーンから手を離してから止まるまでの時間を測っているんです。
田中:その時間を使って作戦を立てているわけなんですね。
粟津:そうなんです。
田中:なるほど。ということは、これまでは洗練された感覚と経験値によって勝ち負けが決まっていたカーリングが、これからは、データやパワーでという時代になってくるんですね。
粟津:そうですね。
田中:「デジタルによるデータ化」は日本ではフォルティウス以外はまだ着手をしていない。そこを、ニューズドテックが協力していこうということなんですね。まずはじめにどんなことをやりたいですか?
粟津:まずは足をおいて蹴る部分で、圧力をはかりたいなと思っています。押す力ですね。あとは、足と指先との距離が離れていくと、スピードや精度にも関わってくるので、肘のあたりにセンサーをつけたりして測っていきたいですね。
田中:まずは動きを可視化していくところからスタートしていくわけですね。そうすることによって、カーリング界はどう変わっていくと感じていますか?
粟津:今までは感覚だったので、感覚値が、なかなか他の選手や次世代の選手に伝わらなかった。それが、データを見ることで、次の一投にも繋がるし、次の育成にも繋がると思うんです。やり方が大幅に変わるなと思います。
田中:相手の傾向も分析できそうですよね。そこで、ニューズドテックの資産であるデバイスもそうですし、データを使う会社でもあるので、そこをリンクさせていくわけですね。
粟津:そうですね。
田中:もう着手は始まっているんでしょうか?
粟津:今ちょうどしようとしているところです。
田中:では、もうすぐ時代が変わる時がくるかもしれないんですね。
粟津:そうですね。2026年のミラノ・コルティナ五輪は、データ分析した後のカーリングがみられると思います。今まで五輪中継などで見られてきたカーリング中継も変わるんじゃないでしょうか。
田中:野球や卓球、そしてカーリングも、一投一投に間があるので、必ずデータをもう一度見直したりして作戦を立てられる。大いに可能性がありますよね。あとはこれからデバイスを使っていくわけですが、そこに組み込んでいくデータやアプリ、サービスはどういったものを考えていますか?
粟津:今は先にお話したような「スマホカルテ」など、スマホ内のデータを作っています。
田中:そのスマホカルテというのは、カルテのように、今のスマホを診断できるものかと思いますが、それはどういった項目があるんでしょうか?
粟津:今は26項目あって、液晶の状態や、マイクやスピーカーの状態、それから加速度センサーなど、センサーが動いているかどうかの診断もできます。
田中:ユーザーの皆さんや世間の反応はいかがでしょうか?
粟津:思った以上にダウンロード数がのびました。スマホが壊れているかどうかって、回線の問題なのか、端末の問題なのかって切り分けができないみたいなんです。そこで、スマホカルテを使って、その切り分けをはっきりさせることに用いてもらったりしています。