大事故から復帰し、飽くなき挑戦を続けるレーシングドライバー「命があれば、何とでもなる。」

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昨夏に富士山登頂に挑んだ際の長屋宏和さん。電動アシスト車いすで8合目まで到達した(本人提供)


 東京都内の自宅で再会したが、車いすに乗った弱々しい姿に思わず息をのんでしまった。首から下にまひが残り、両腕だけは動かせるものの、握力がほとんどない。声にもどことなく張りがない。ツインリンクもてぎ(栃木)で行われたカートレースを取材した時もちょうど冬場にさしかかった時期で「うまく体温の調整もできない」と目いっぱいに厚着をしていた。

 そんな体でありながら、手元だけで操作できる特別仕様のハンドカートでコースインすると、上手に乗りこなしてしまった。運動機能に制限はあるが、培ってきた運転感覚は健在。大惨事からわずか2年2カ月でレース復帰を果たしたことが信じられず、取材しながら私も目が潤んだ。彼はその後も参加型レースに積極的に出場した。

 長屋さんとはこの夏にサーキットでばったりと出くわした。自動車レースの「86/BRZレース」でチーム監督を務めており、車いすに乗りながら後進の指導にあたっている。昨年まではヴィッツレースのチームで監督をしており、監督歴は今年で4年目だ。

 レース以外にも活動の幅を広げている。車いす生活者用のファッションブランド「ピロレーシング」を05年に立ち上げ、ファッションデザイナーとして活躍中なのだ。

 社会福祉活動への功績が認められ、13年には日本青年会議所が主催する「人間力大賞グランプリ」を受賞。秋の園遊会にも招かれた。今年3月に新型コロナウイルスの感染拡大でマスク不足が深刻になると、服飾のノウハウを生かしてデニム地のマスクをいち早く製作。手作りマスクの先駆けとなった。

 このほか、電動アシスト車いすを使って富士山登頂にも挑戦。2年連続2度目の登山となった昨年夏には8合目まで到達した。今年は山開きされず、断念したが、来年こそは念願の登頂を目指すという。

 「命があれば、何とでもなる。体は元通りにならないかもしれないけれど、命を取り留めたので、違うことで目標を立て、そこで結果を残すこともできる。僕はそう思っている」。あらゆる活動に全力で向き合うバイタリティーには頭が下がる。彼の生き様には見習うことがたくさんある。

[文・写真/中日スポーツ・鶴田真也]

トーチュウF1エクスプレス(http://f1express.cnc.ne.jp/)






※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

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