【現地発】米記者が明かす“不気味な”カルデナスの参謀の存在 それでも井上尚弥のベガス帰還戦で「圧倒的優位」を断言する理由

すでにベガスで練習を重ねている井上とカルデナス。この両雄に対する下馬評は明確な形で表れている。写真提供:Prime Video、©NAOKI FUKUDA
井上に対して付け入る隙が感じられない理由
世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)のラスベガス帰還戦が間近に迫っている。
現地時間5月4日、米ラスベガスのT-モバイルアリーナで、WBA同級1位のラモン・カルデナス(アメリカ)の挑戦を受けることになった“モンスター”。試合を間近に控え、現地は盛り上がり始めたが、肝心の試合予想は圧倒的に「井上優位」に傾いている。
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米専門メディア『Boxing Scene』でシニアライターを務めるベテラン記者、ランス・パグマイヤ氏も井上のKO勝ちを予想する1人だ。
「試合は8ラウンド以内に決着するだろうと言わざるを得ない。井上は自分の意志を貫くだろう。彼はこの舞台を本当に楽しみにしており、センセーショナルな戦いを披露することを熱望している。結果はきっとそうなるはずだ」
プロ通算26勝(14KO)1敗、直近の14戦は全勝(5KO)というカルデナスは一定以上の技量を備えた好ボクサーである。攻守ともにまとまっており、守備意識も高い。さらに左フックという得意パンチもある。このまま地道にキャリアを重ねれば、いずれ(井上が階級を上げた後にでも)世界タイトルを取る可能性もあるかもしれない。
それでも井上に対して付け入る隙が感じられない理由は、4月23日にロサンゼルス行われた公開練習も取材したパグマイヤ記者のこんな言葉からも見えてくる。
「LAでの公開練習の際、井上の話を聞くのは楽しいことだった。彼は今回の試合をどれだけ楽しみにしているかを話していた。過去にもアメリカで戦った経験があるが、ロサンゼルスではアンダーカードで、ラスベガスでの2試合はパンデミック中のイベントだった。それが今回はシンコ・デ・マヨのメインイベントなのだから、気持ちが入るのも理解できる」
いまや全階級を通じて最高級のボクサーと称されるようになった井上にとって、今回はいわゆる“トラップファイト(落とし穴のような試合)”になる可能性がある一戦でもあったかもしれない。
過去、スティーブン・フルトン(アメリカ)、オマー・ナルバエス(アルゼンチン)、ファン・カルロス・パヤノ(パナマ)、ノニト・ドネア(フィリピン)との再戦など、井上は強敵との対戦時に最高の力が引き出される傾向にある。カルデナスは好バランスを保つファイターではあってもそこまでの知名度、実績がある選手ではない。だとすれば、緊張感が多少薄れても不思議はない相手だったのかもしれない。
ただ、今戦の舞台は約4年ぶりのラスベガス。1万人以上の観客動員が期待され、試合当日は多くの米メディアが取材に駆けつけると予測される。しかも、メキシコ最大級の休日であるシンコ・デ・マヨのメインイベントとあれば、闘争心とモチベーションは最高潮に高まるに違いない。米ボクシングの“メッカ”にて顔役を任され、油断や緊張感の欠如など井上にあろうはずもない。